平野美宇か、伊藤美誠か。卓球パリ五輪代表争い最終ラウンド。平野が逃げ切る決め手、伊藤の逆転への条件は?<RS of the Year 2023>
「最後まで諦めはしない」モノをいう伊藤の経験値
伊藤には世界最高峰の卓球の舞台で修羅場をかいくぐってきた「経験値」がある。 全農CUP大阪大会の7位・8位決定戦では、平野が5位・6位決定戦で大藤沙月に敗れる中、伊藤は横井咲桜を競り落として勝利している。 ギリギリのところで、伊藤のポイントは平野と34.5ポイント差に留まった 全日本選手権で、平野がもしベスト32で敗退した場合「+10ポイント」。その際に伊藤がベスト8まで勝ち上がれば「+50点」となる。 この状況を、23歳にしてすでに百戦錬磨の伊藤なら、冷静に見つめているはず。他力本願なところもあるとはいえ、このポイント差ならまだ詰められる可能性は十分ある。 全日本選手権では、国内から下克上を狙ってくる若手選手を、「安定して倒していく力」が求められる。幾多の僅差の試合を勝ち抜いてきた伊藤の経験値がモノをいうシーンも多くなりそうだ。 全農CUP大阪大会の後、伊藤は「最後まで諦めはしない」と言い切った。勝負は、まだ終わっていない。
女子シングルスが「2枠」というつらい現実
全農CUP大阪大会は、決勝で早田ひなを負かした張本美和が優勝している。 高身長から繰り出されるミスのないラリーが、トップとでも渡り合えるレベルで安定感が出てきた。ここにきて、この張本美和こそ早田と並ぶツートップで、もしかすると「今一番強いのではないか?」という声もある。 日本の女子卓球は、近年、凄まじい勢いで成長してきた。少しずつ世界のトップ、卓球王国・中国に近いところまできている。現に中国が「一番のライバル」と警戒するほど、日本の女子卓球は強い。 だからこそ、この女子シングルスの代表者が2枠というのはとても残酷だ。 平野美宇、伊藤美誠、木原美悠、張本美和、長﨑美柚。さらには、全農CUPで平野、伊藤と対戦した、大藤沙月、横井咲桜も大接戦となった試合ぶりを見る限り大きな力の差は感じない。 つまり、本来この2枠に入ってもおかしくない実力の選手が日本には数多くいるのだ。 すでに当確となっている早田ひな。残る1つの席を射止めるのは誰になるのか? 現時点ではやはり平野が有力だが、意地とプライドと情熱がぶつかり合う、残るたった1つの代表枠の争いから、最後まで目が離せない。 <了>
文=本島修司