両国国技館で人気の「スイーツ親方の店」まで閉店 芝田山親方“左遷“の背景に「NHK放送権料交渉」
大相撲夏場所は5月26日の千秋楽まで前売り券完売ではじまったが、八角理事長(元横綱北勝海)が公約として掲げる「土俵上の充実」にはほど遠い状況だ。先場所、110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士と三役復帰した朝乃山が初日から休場。2日目からは横綱照ノ富士、大関貴景勝、7日目から大関霧島、関脇若元春と、19日までに十両以上で10人の休場者が出ている。 芝田山親方(元横綱大乃国)“報復人事”で「閑職」報道……内紛予感させた”スイーツ親方”の本当の姿 土俵外でも、今月から5期目に突入した八角理事長の新体制で芝田山親方(元横綱大乃国)が執行部から教習所所長に配置転換。相撲担当記者の間では「次期理事長候補のポストといわれる事業部長に昇格すると思われていた」が、事実上の“左遷人事“で、同じ北海道・十勝出身でしのぎを削った2人の元横綱の確執が浮き彫りになった。別の相撲担当記者がこう明かす。 「八角理事長の側近(宮田哲次主事)が協会職員に対するパワハラがあったにもかかわらず、謹慎期間が解けると何も変わらずに続投が決まった。これに『異議あり!』と手を挙げたのが芝田山親方でした」 ’15年11月、故北の湖前理事長の死去により相撲協会のトップを牽引してきた八角理事長は、「執行部に盾つくものは何人たりとて許すまじ」の姿勢を貫いてきた。’18年に執行部と対立を続けてきた貴乃花親方を退職に追い込み、さらに、2月に現役時代から協会運営に異議を唱える言動を繰り返してきた宮城野親方(元横綱白鵬)の不祥事が明るみになると、厳罰として部屋の事実上の閉鎖を決めた。芝田山親方とはむしろ、これまでの多くの不祥事を改善するために「土俵の充実」をともに訴え続けてきた同志だったが、亀裂が決定的になったのは、日本相撲協会の収入の命綱でもあるNHKからの年間放送権料(1場所5億円、年間30億円)の交渉にあったという。 「日本相撲協会は年6場所のテレビ生放送の契約をNHKと結んでいます。1場所5億、年間30億円といわれていて、国民が収める受信料が原資になっています。ただ、NHKは’22年10月に『(’21~’23年度)経営計画』の修正案を発表していて、受信料の値下げやチャンネル数を減らすなど大々的な『スリム化宣言』をしていて、その一環としてスポーツの放送権料の削減を決めました。その総額は150億円といわれています。さらに、’23年度から受信料も値下げしています」(夕刊紙記者) ’90年代、大相撲が空前のブームとなった若貴フィーバーでは1場所4億円という放送権料だった。’00年以降は相撲ブームが下火になったにもかかわらず、1場所5億円に値上げされた。 「あの頃、NHKの剛腕会長だった海老沢勝二氏が横綱審議員の委員長になりたくて値上げされた、といわれています」(当時を知る相撲担当記者) 日本相撲協会とNHKの長年の“蜜月関係“から放送権料を値下げに踏み切ることはないだろう、とみられてきたが、スポーツ放映権料や受信料の値下げを断行して絶対的な収入が減るNHKも背に腹は代えられない状況となった。 「今回、NHKが日本相撲協会に“値下げ”の通達をしたところ、芝田山親方が『なんとか食い止めないといけない』と広報部長として、通常業務として3年契約をとりつけたそうです」(前出の夕刊紙記者) しかしNHK側は芝田山親方の要望には応じなかった。その状況を知った八角理事長がNHK側に出向いたものの「芝田山親方が交渉した時よりは若干、値段を上げられたようですが、放送権料の値下げそのものは食い止められなかった。結局、最初に交渉にあたった芝田山親方の“失敗”によって、2人の関係に完全に亀裂が入ってしまいました」(同) ◆東京場所限定の相撲ファンの人気の名店が消滅 12日から開催中の夏場所でも八角VS芝田山の“亀裂“を象徴するかのような出来事があった。当時広報部長、総合企画部長の要職にあった芝田山親方の部下、高崎親方(元幕内金開山)のアイデアで、‘21年夏場所から、両国国技館内に「スイーツパン」や「横綱食パン」などを販売する「スィーツ親方の店」を開店していた。午前11時頃から連日販売し、週末には400個も売れる相撲ファンの間でも超人気の売店だったが、今月からその人気の名店も一切の告知なしで看板を下ろしている。 「芝田山親方は『男が甘党で何が悪い!』という自前のエプロンを着て、売り子もしていました。コロナ禍で客足が遠のく中、少しでも相撲ファンのためになることをしたい、と始めた店でした」(相撲担当記者) 現役時代は横綱まで上り詰めた芝田山親方が売り子まで率先してこなして相撲人気を支えようとしていたが、そんな健気な姿も八角親方の心には響かなかったようで、結局は距離を置かれてしまった格好だ。 上位陣の休場続出で、誰が優勝してもおかしくない「番付崩壊」が起きているとも指摘されている今場所。その裏では元横綱同士の「暗闘」も続いている。
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