「長崎が納得できないのは当然」カリーレ監督の“契約問題”はなぜ起きた? ブラジル人記者が明かす舞台裏【現地発】
サントスからのオファーを一度は断った
しかし、私がサントスの内部の人間に聞いた話だと、ストーリーは少し違ってくる。確かにカリーレと彼の代理人は11月、長崎と1年の契約更新に合意した。そこにサントスからオファーの話が来る。カリーレはそれを断った。 「私はすでに長崎と契約更新で合意している」 すると今度はテイシェイラ会長からカリーレ監督に直々に連絡が来た。テイシェイラは彼を辛抱強く説得し、最後にこの言葉を引き出した。 「いいでしょう。サントスに行きましょう。しかし、私はすでに長崎にOKと答えています。おそらく違約金が発生することになるでしょう。その算段がつきますか?」 そこでテイシェイラは、今度はカリーレの代理人パウロ・ピトンベイラと話をする。テイシェイラはサントスには違約金に充てる金はないと説明する。そのあとがミステリーだ。テイシェイラと代理人の間でどんな話がされたか、そして代理人は長崎に対してどんな対応をしたかまではわからない。ただ、カリーレがブラジルに旅立ったということは、すべて決着がついたと彼が理解したからだ。 カリーレはこれまでどんなチームとも問題を起こしたことはないし、契約をおろそかにするような人間ではない。長崎との契約がクリアになった。少なくともカリーレ自身はそう信じていたはずだ。 とにかくカリーレはすでにサントスで仕事を始めてしまっている。長崎が取り戻す可能性は低いだろう。ただ、最終的に違約金は支払われると思う。そこが落としどころではないだろうか。サントスに資金はないといっても、テイシェイラ会長は大学やTV局などを所有するなどサントスで1、2位を争う大金持ちなのだ。 取材・文●リカルド・セティオン 翻訳●利根川晶子 【著者プロフィール】 リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。