憧れだった「ナナハン」は、もはや死語!?
漫画の主役は、もちろんナナハン
そして当時の漫画にもナナハンが登場します。1975年に週刊少年チャンピオンで『750ライダー(ナナハンライダー)』の連載がスタートしました。
そして1980年代は空前のバイクブームとなり、週刊少年マガジンで1981年に『あいつとララバイ』が、さらに1983年から『バリバリ伝説』の連載が始まりました。いずれも高校生の主人公がナナハンに乗っていることが共通点で、いまだバイク漫画の金字塔と言えるでしょう。 これらの漫画に憧れ、非常にハードルの高かった運転試験場の限定解除試験に挑戦したライダーは数多く存在しました。
「オーバーナナハン」が続々登場して……
ところが、「ナナハンがエライ!」という風潮は、1980年代後半頃から変化してきました。現在も人気の高いカワサキ「GPZ900R」(いわゆるニンジャ)や、スズキ「GSX1100S KATANA」の登場から数年が経ち、「逆輸入車」を扱うショップが増えたり、プライスも高いとはいえ徐々にこなれて手に入りやすくなってきました。 そして1990年には排気量上限の自主規制が撤廃され、実質上最大排気量だったナナハンの長い時代は終わりを告げ、次々と「オーバーナナハン」の国内販売が始まりました。 ちなみに、次なる自主規制として「馬力の上限」が1989年から始まっており、750ccを超える車両は上限が100psと決められたので、せっかく登場したオーバーナナハンですが、国内仕様は輸出モデルより大幅にパワーダウンされました。
そのため、この時代は「ナナハンがエライ!」から「逆輸入車がエライ」に変わったイメージがあります(国内の馬力自主規制は2007年に撤廃)。
身近になった大型免許で、ナナハンのステータスが消えた
1990年代に入って国内の排気量上限の自主規制が撤廃されたり、輸入車(外国車や逆輸入車)が入手しやすくなったりしましたが、1995年にはついにバイクの免許制度が改定され、排気量無制限の大型自動二輪免許が自動車教習所で取得できるようになったのです。 こうなると、せっかく大型免許を取ったのだからビッグバイクに乗りたい……と思うのが人情というモノ。それに呼応するように、1000ccを超える大排気量車も多数ラインナップされ、もはやナナハンにこだわる理由は無くなった……と言えるでしょう。
かつては大排気量と高性能の証であり、ステータスでもあったナナハンですが、このような時代背景を経て激減し、現在は国内メーカーでナナハンを生産しているのはホンダのみとなり、キャリアの長い熟年ライダーは少々寂しく感じているかもしれません。 とはいえ現在、全国の自動車教習所の大型自動二輪免許の教習車はホンダ「NC750L」(市販モデルのNC750X、または前モデルのNC750Sがベース)が主流で、じつは多くのライダーが「ナナハン」のお世話になっているのです。
伊藤康司