「超富裕層に課税せよ」ブライアン・イーノ、経済格差と政治腐敗に物申す【G20サミットへの提言】
音楽界のレジェンド、ブライアン・イーノ(Brian Eno)からG20サミットへの提言。「トランプ大統領が再び権力を握った今こそ、より強いリーダーシップが必要だ」。 【画像を見る】謎の死を遂げた超富豪とその恋人 11月18日・19日、G20(主要20カ国・地域)の各国首脳がブラジルのリオデジャネイロに集まり、第19回目の年次サミットが開催される。国際社会のリーダーたちが議論する議題には、気候変動、社会的包摂、政府改革などが含まれる。この独占インタビュー記事で、ブライアン・イーノ氏(著名なミュージシャン/プロデューサー、ロックの殿堂入りを果たした人物にして、「Patriotic Millionaires」[税制の再構築を推進する富裕層の超党派組織]のメンバーでもある)は、G20が検討すべき最も重要な優先事項のひとつについて、自らの見解を述べている。 * まもなくG20首脳会議が開催されます。主要経済国の首脳が一堂に会するのは今年初めてであり、ドナルド・トランプが再選されて以来、初めての会議でもあります。 これはすべての首脳にとって重要な会議であり、7月にG20の財務大臣たちが「超高額所得者への課税方法について協力し合う」という公約を交わしたことにより、その重要性はさらに高まっています。この公約は、超富裕層がさらなる富、影響力、権力を手に入れることを許さないという取り組みにおいて、大きな前進となりました。G20の共同声明に、個人の富や、それを問題としてどのように管理するかに関する文言が盛り込まれたのは、今回が初めてのことでした。この公約への再コミットメントは今、これまで以上に重要な意味を持ち合わせています。 アメリカ大統領選挙から2週間が経ちました。民主党が大敗し、共和党が空前の勝利を収めたーー次期大統領のトランプは民主的に選出されたかもしれませんが、彼がそこに至るまでのプロセスは、影響力の平等という原則をまったく反映していません。今日の民主主義が公平とはほど遠いことは、誰の目にも明らかでしょう。 アメリカでは政治的な買収、広告/メディアの支配において、極端な富裕層が大きな影響を及ぼしてきました。これは今日、ほぼどこの国や地域でも見られる傾向です。有権者の感情に影響を与え、投票行動に影響を与える場合、これらの要素は重要です。例えば、トランプ氏の選挙キャンペーンの最大の献金者の一人、イーロン・マスク。彼は自身の事業による政府との巨大な契約を通じて、政治に大きな影響力を持っているだけでなく、世界最大級のソーシャルメディア空間を所有し、そこで何が宣伝され、どの意見が最も重要視されるかをコントロールしているわけですよね。マスクは選挙以来、その資産が260億ドル(※約4兆円)も増加したと報じられているマルチビリオネアですが、彼にとっての真の報酬は政府内の役職であり、そこではおそらく、彼自身や彼のような超富裕層のために、さらに大きな権力を発揮できるでしょう。富とは価値ではなく、支配力なのです。 さらに問題なのは、こうした超富裕層が、米国を含む世界のあらゆる国々で格差を拡大させていることにあります。 富裕層がますます裕福になる一方で、一般市民のための変化を掲げたエリート層が(再び)政権を握ったという皮肉な現実を、私たちは見過ごしてはなりません。 政治家たちは何十年にもわたって、経済の安定を維持し、GDPと経済成長を成功の尺度として重視することで、一般市民の生活実感をほとんど無視してきました。これは、パイの分け前が減っていくのを眺めるしかない人々には通用しないですし、今後も通用することはないでしょう。大富豪や市場が褒めてくれるような無難な政治を信奉する政府は、今や明らかにその職務に適していないのです。