「どうしても残しておかないといけない技術」蚕の飼育から染織物の製造まで一貫して手作業で 守り受け継がれる技術と思い
絹をつくるための蚕の飼育から染織物の製造までを行う全国でも珍しい工房が宮崎県綾町にあります。 その工房を創設した男性が、業界の発展に貢献したとして、今月、権威ある賞を受賞しました。 工房で長年、守られている技術、そして男性の思いを取材しました。 【写真を見る】「どうしても残しておかないといけない技術」蚕の飼育から染織物の製造まで一貫して手作業で 守り受け継がれる技術と思い ■神前に捧げられているのは生糸 12日、綾町の神社で行われた神事。神前に捧げられているのは生糸です。 この神事は、蚕が作った「繭」に感謝するもので、「綾の手紬染織工房」のメンバーが参列しました。 (綾の手紬染織工房 秋山眞和さん) 「今年はとても天気に恵まれて、蚕にとってはいい天候でしたので、とてもいい繭ができております。その御礼を申し上げました」 ■全国で唯一、養蚕から製織までを一貫して手作業で行う 国の「現代の名工」に選ばれている伝統工芸士の秋山眞和さん(83歳)。 父親から染織業を継ぎ、1966年に「綾の手紬染織工房」を創設しました。 工房は全国で唯一、養蚕から製織までを一貫して手作業で行い、今月1日には、蚕糸絹業の振興・発展に貢献したとして、大日本蚕糸会から秋山さんに「蚕糸功績賞」が贈られました。 この「蚕糸功績賞」、富岡製糸場の設立に関わった渋沢栄一も受賞した権威ある賞です。 (綾の手紬染織工房 秋山眞和さん) 「ちょっと恐れ多いんですけども、どうしても残しておかないといけない技術でもあるかなと思っています」 ■日本在来品種である「小石丸」の繭を使い続ける 業界では、現在、交雑種の蚕が主流となっていますが、こちらの工房では、日本在来品種である「小石丸」の繭を使い続けています。 (綾の手紬染織工房 二上拓真さん) 「いろんな品種がある中で、秋山が『この小石丸が藍染に一番適している』ということで、その当時は育てている場所とかいろんな制限があったので、その中で育てられる方法を考えて、今に至っているという感じです」 小石丸の繭は、一般的なものと比べて糸は細いものの、つやがあって丈夫という特徴があり、現在、日本国内で通年で育てているのは、皇室とこの工房だけだということです。