<リオ五輪>400mリレーで日本に銀メダルをもたらした改良型バトンパス
この日、世界トップクラスのリアクションタイムを持つ1走の山縣が弾丸スタートを切った。ポイントは2走の飯塚だったが、少しバトンゾーンでのスタートが速かった。 「少し距離を伸ばしたが、絶対に渡ると信じていた」と、山縣。一方の飯塚も「信頼していた。ミスることなんて考えていなかった」という。練習で阿吽の呼吸をつかんでいたのである。 バトンゾーンギリギリでのバトンパスとなったが、飯塚は一気にトップスピードに乗って踏ん張った。 「桐生だけを見てバトンを突っ走った」 飯塚から桐生へのバトンパスはスムーズだった。 4人の中で100mの最高タイム、10秒01を持つ桐生も「絶対に渡してくれると信じて思い切り前に出た」という。桐生がジャマイカに次ぐ2位に上がって、アンカーのケンブリッジ飛鳥にバトンを渡す。 ケンブリッジ飛鳥は、ウサイン・ボルトと一時は併走しながら、アメリカ、カナダの猛追を振り切って2位をキープしてフィニッシュ。37秒60のタイムは予選で作ったアジア記録を更新するものだった。 レース後、4人は「信頼」という言葉を重ねた。 100mでは一人だけ予選敗退となっていた桐生は「日本のバトンパスは最高です」と胸を張った。 前述の不破弘樹さんが、こう強さを解説する。 「感動しました。日本が9秒台をそろえる走力のある相手に勝つには、3度の機会があるバトンパスで、一人ひとりが背負う0.1秒、あるいは0.0何秒のハンディを埋めるしかなかった。アンダーバトンパスは、4人に少しでも、走力差があれば成り立ちません。しかも、練習から集中力とコンディションの維持が必要になります。今回は、レベルアップした4人の走力に、北京五輪の技術をベースに積み上げてきた技術がプラスされ、アメリカやカナダチームにある隙をつくことになりました。失格したアメリカとは、わずか0秒02、カナダとは0秒04の差ですからね。紙一重を勝ち抜く世界トップの技術です」 100mの決勝に進出したスプリンターも、9秒台も一人もいない日本が達成した銀メダルの快挙。個を組織と技術で打ち破る。まさにトレーニングで磨いたバトンパスの技術とチームワークの勝利だった。