待機児童より多い“待機老人”は52万人、特養老人ホームの整備は進んでる?
ドラえもんの声優で人気だった大山のぶ代さん(82)が、老人ホームに入所していたことがわかりました。認知症を発症した大山さんを支えてきたご主人も病気で介護が難しくなったためです。特に特別養護老人ホームの数は、介護保険制度を機に増えてはいますが、入所待ち申込者は52万人といわれています。認知症を患った高齢者を家庭で支えることができなくなったとき、受け皿となるべき施設の整備は、果たして進んでいるのでしょうか。
追いつかない「終の棲家」整備 入所基準も厳しくなった
認知症の高齢者が入所する施設としては、一般的に広く知られている介護老人福祉施設、いわゆる「特別養護老人ホーム」、主にリハビリなどの訓練を目的とした「介護老人保健施設」、長期療養ができる「介護療養型医療施設」のほか、「有料老人ホーム」、近年施設数が増えてきた認知症対応型共同生活「認知症高齢者グループホーム」などが挙げられます(表1)。 中でも、在宅生活が困難で、常時介護が必要な高齢者を対象とした特別養護老人ホームは特にニーズが多く、入所申込者数が増え続けていることが問題になっています。それは、特別養護老人ホームが、介護保険の適用施設であることはもちろん、自治体や社会福祉法人によって運営されていて、収入などに応じた助成があり、有料老人ホームよりも安価であること、また入所しても3カ月ごとに審査がある介護老人保健施設などと異なり、最期のときまで介護を受けることのできる「終の棲家」として過ごすことができること等が理由とみられます。 厚生労働省高齢者支援課によると、これら特別養護老人ホームは毎年増え続け、介護保険制度がスタートした平成12年には全国4463施設、利用者数約29万6千人でしたが、最新の統計では7249施設、定員数約50万人(平成26年3月時点)と、いずれも1.6倍以上になっています。しかし、それでも入所申込者は解消されないのが実情で、各都道府県の集計ではおよそ全国52万人(同3月)にのぼることがわかりました。これは5年前の21年度の調査から、10万人増えています。 ただ、これら52万人の入所申込者数が、すなわち特別養護老人ホームのサービスを求めている潜在的なニーズと合致しうるのか、疑問を投げかける人もいます。ブログでは、介護保険の適用者数から待機者数を500万人とみる人もいますし、実際、厚労省もホームページで、専門家の間では現在、認知症高齢者が65歳以上人口の10%(242万人)に達しているという見方を示した上で、2020年には325万人まで増加するとも推計しています。 こうした実情に対応するため、国もさまざまな対策をはじめています。昨年4月には、介護保険法が改正し、特別養護老人ホームの入所条件は、「要介護度1」(身の回りの世話に何らかの介助が必要で、問題行動・理解低下がみられることがある)から、原則として「要介護度3」(身の回り全体に介助が必要で、いくつかの問題行動や全般的な理解低下)以上と厳しくなりました。実は、先ほどあげた約52万人の入所申込者数のうち、すでに何らかの高齢者施設にいて、そこから特別養護老人ホームを希望している人が半数います。その残り半数26万人の在宅待機者の中でも、特に重度の要介護度4以上の申込者約8万7千人の対応を優先するべき、とみたためです(表2)。 また、同じく昨年、国は、特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・サービス付き高齢者住宅などの高齢者施設12万人分整備のため、900億円以上の補正予算を決めました。これはもともと、2020年度初頭までに、これらの施設38万人分整備する計画だったものを、収容できる定員を上乗せした上、さらに前倒しで実施しようと計上されました。