【解説】妊婦向け文書が“炎上”…批判集中のワケ 広島・尾道市の配布文書
SNSでは、「ママを追い詰めるために配っているのか」「産後は身体がつらくて体力なんてないのに、夫の世話までしないといけないのか」「参考にしたら育児ノイローゼになりそう」と怒りの声が相次ぎました。「妊婦さん向けの文書としては不適切だ」という声がとにかく多かったです。
■見直しはせず…5年間同じものを配布 父親向けの文書も
なぜこのような文書を配布したのか。25日、尾道市役所に取材しました。 アンケートをとったのは2017年度で、2018年度に配布が始まりました。まとめる作業は女性職員がメインで行っていて、これから出産・育児に役立ててもらいたいという思いで進めたそうです。5年間、同じものを配布していたが、見直しなどは行っていなかったということです。 実は、母親に対してだけでなく、父親に対しての文書も配布していました。その文書を見てみると、「家事を手伝ってくれない(3位)」とか「飲み会を優先しないでほしい(1位)」といったように妻の気持ちもランキングにしています。 いずれにせよ、尾道市が批判された背景には「妻が産後にどれだけぼろぼろになって育児をしているか理解してほしい」という気持ちがあるという点があげられます。
■産後に夫への愛情の冷え込み 男性の育児休業取得の環境もまだ整わず
子育てサービスなどの事業を展開している「カラダノート」が、約1200人の母親を対象に行った調査です。 「産後、夫への愛情の冷え込みを感じたことがある」と答えた人のうち、9割以上が「産後半年以内」に冷え込みを感じ始めたと答えています。 これは「産後クライシス」とも呼ばれていますが、出産をきっかけに夫婦仲に亀裂が生じる方は少なくないです。 理由はさまざまありますが、ひとつあげるなら「家事育児の分担」です。母親が9割以上、家事育児を負担している夫婦ほど「関係が良好ではない」という調査結果もありました。 ただ、がんばりたいと思っている男性が多いのも事実です。子育て関連事業を展開する会社が、去年秋に全国の乳幼児をもつ父親、約400人に行った意識調査によると「今以上に育児に関わりたいと思っている」と答えた父親は約9割いました。(たまひよ妊娠・出産白書2023調べ) ところが、男性の育児休業率を見てみますと、2021年度は13.97%でした。政府は2030年度までに85%まで引き上げることを目標としていますが、かなりほど遠い現状です。 背景に何があるのか。育児休業をとれないと感じている現状を聞いたところ、半数近くの45.8%が「仕事を代われる人がいない」と答えていました。そして「職場の雰囲気が休みにくい」が3割程度(33.2%)でした。まだまだ環境が整っていないですね。 産後だけでなく、子どもが笑顔で成長していけるよう、両親ともに当事者意識を持つこと。そして、シングル(1人親)の場合もあります。すべての子育て世帯をサポートできる社会の仕組み作りが今求められています。 (2023年7月25日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)