2023年度の「農業」倒産77件、年度最多を更新中 コストアップ、人手不足等で新興企業の倒産が目立つ
【業種別】「野菜作農業」が最多 きのこ類栽培業者が目立つ
業種別(小分類)では、最多が「耕種農業」の48件(前年度比14.2%増)。耕種農業のうち、最多は野菜作農業の37件で突出した。野菜作農業のうち、きのこ類の栽培業者が16件発生した。きのこ類は省スペースの反面、温度や湿度管理が求められるため、燃料費の高騰が経営の圧迫要因となった。このほか、花き作農業が5件、米作農業が3件だった。 次いで、「畜産農業」の22件(同21.4%減)で、養豚業が最多の7件、次いで養鶏業が4件、肉用牛生産業が3件と続く。畜産農業は前年度に飼料や燃料費の高騰、伝染病の広がりなどから件数が大幅に増加し大型倒産が相次いだが、2023年度は反動減からやや落ち着いた。
【負債額別】1億円未満が6割、負債の小型化進む
負債額のレンジ別では負債1千万円以上5千万円未満が最多の27件(前年度比10.0%減)だった。これを含む負債1億円未満が48件(同11.6%増)と増加し、全体の6割を占めた。また、中堅規模の負債1億円以上10億円未満も26件(同44.4%増)と増加したが、負債10億円以上の大型倒産は3件(同80.0%減)にとどまり、前年度の15件から大幅に減少した。前年度は国内有数の鶏卵業者、イセ食品グループや、豚熱の発生で経営が悪化した豚・牛畜産の神明畜産グループなどの大型倒産が相次いだが、2023年度は負債の小型化が顕著となった。
【業歴別】業歴20年未満の新興企業が約6割
業歴別の最多は「10-20年未満」の22件(構成比28.5%)で約3割を占めた。次いで「5-10年未満」の15件(同19.4%)、「1-5年未満」の9件(同11.6%)と続き、業歴20年未満の新興企業が46件(同59.7%)と、約6割を占めた。 小資本で設立したものの、事業計画の見込みが甘かったり、事業基盤が安定化しないうちに経営環境の悪化に見舞われたケースなどが多い。一方、業歴が最も長かったのは新潟県の精米業者(株)MSC(TSR企業コード:200198114)で、業歴136年(創業1887年)に及ぶ。