山内圭哉とクレイジーな福田転球が自由にできる場所、大阪に
■ 「おもしろかった大阪は、おもしろくあってほしい」(山内)
お2人と同世代の私も50歳を超え、最近自分が持つ知識や技術などを、いかに次の世代に渡していくかを考えるようになりました。特に笑いを志す若い演劇人がなかなか現れないなかで、お2人もそういうことを考えたりしますか? 山内 「そもそも、若い子がうちには来いひん(一同笑)。すごいですよ、客席のおっさんおばはん率。えらいもんで、みんな一緒に年取ってるなあという感じです」 福田 「でも確かに若い子がひとりでも来てくれて『むちゃくちゃおもろいでー』って、みんなに言うてくれたらなあと思いますね」 山内 「今まであまり客層を広げるということを考えてこなかったけど、若い子に刺激を与えようと思ったら、やっぱり売り方を考えなあかんよね。学割を作るとか。そこまで考えが及んでなかったなあ」 「でも笑い云々言わんかったらね、東京は若い奴がなんぼでも出てくるんですよ。しかも動じずにお芝居がやれて、真摯に演技に向き合う子ばかりだから、こっちがなにかを渡そうという発想には、あまりならないんです。むしろ、たまに大阪に来たときに『おい、大阪! 大丈夫か?』って気持ちになる」 福田 「人はめっちゃ多いねんけど、勉強しに来いひんなって感じがする」 山内 「僕らが出てる芝居がこっちに来ても、誰も見に来ないんですよね。本当に停滞しているというか、停滞したまま廃れていくんじゃないか? というのを、すごく感じます」 ──それはやっぱり、東京の演劇界にいながら大阪のスピリットがまったく薄れないお2人ほど、発破をかけるのにふさわしい人たちはいないと思いますよ。 山内 「『がんばれ!』っていうか『おもしろかった所やから、おもしろくあってほしい』って思います」 福田 「演る人たちじゃなくて、制作する人が少ないんじゃないかな?」 山内 「僕らの持ってる大阪らしさ、大阪の文化みたいなものは、時代としてもう完全に過ぎていて、今は『ヨーロッパ企画』とかの、僕らの下の世代の劇団が『さあ、どれを選んでいきますか? どうやって遊んでいきますか?』と思っているんじゃないかと。だから今大阪に必要なのは、そういう子たちを見つけて、背中を押してあげるような人じゃないかと思います」 ──プロデューサーであったり、メディアであったり。それは私たちにも突きつけられている問題ですね。 山内 「でも、この前『扇町ミュージアムキューブ』ができたし、来年はMBSの劇場(SkyシアターMBS)ができるでしょ? 新しいでかい劇場が増えてるのって、実は大阪ぐらいですよ。そこからなにかが生まれてくるんじゃないかと思うし、2Cheatもなにかお手伝いができたらいいなと思うから、大阪でやる機会を増やしていくことを考えたいです」 ──笑いつつも、大阪の未来をちらりと考えるような公演になるかもしれないですね。ちなみに大阪に帰ってきたときに、密かに楽しみにしていることってありますか? 山内 「『都そば」を久しぶりに食べたりとか、滞在が長いときは散歩ですね。「あ、この店まだ残ってるわ」とか、そういうのが楽しいです。あとは関西ローカルテレビは見ちゃいますよね。『せやねん!』とか『よ~いドン!』とか『まだこんなことやってんねんや」って、ホッとします」 福田 「逆に『メンバー変わったやん!』とかね。僕は実家が交野の方なんですけど、今までは帰ってきたときに、新大阪から一旦大阪に行って、環状線で京橋までいって、学研都市線に乗って・・・って感じだったんですけど、直通で放出まで行けるようになりました」 ──ああ、今年から「おおさか東線」が開通しましたから。 福田 「あの乗り換えが、いつも楽しみで(笑)。永和駅もそのまま行けるじゃないですか? それがありがたいんですよ。僕、東大阪の友だちが多いから・・・」 山内 「そんなん知らんがな!(一同笑)」 ◇ 『2Cheat6』大阪公演は11月30日~12月3日に「ABCホール」(大阪市福島区)にて。チケットは、前売5500円、当日6000円で発売中。