F1次期PU開発、アウディやレッドブルら新規メーカーにとっては「大きな挑戦」とフェラーリ。現規定ではホンダが過去に大苦戦……歴史は繰り返される?
F1では2026年からテクニカルレギュレーションを刷新し、マシンに搭載されるパワーユニット(PU)の仕様が大きく変更されることが決まっている。レギュレーションが一新されることで、既存のメーカーも新規メーカーも、経験値が大きな差を生むことはないようにも考えられるが、フェラーリでF1パワーユニット・テクニカルディレクターを務めるエンリコ・グアルティエリは、それでも新規PUメーカーにとっては「大きな挑戦になる」と考えている。 【動画】アウディ、F1参戦発表に際しショーカーを公開 次世代PUでは、V型6気筒エンジン+ハイブリッドシステムという現在の構成を引き継ぎつつ、高価かつ複雑なMGU-Hを廃止。内燃エンジンと電気モーターの出力比率を50:50にすることをF1とFIAは目指している。 このレギュレーション改訂を機に、アウディとレッドブル・パワートレインズ(RBPT)が2026年から、アンドレッティと手を組むキャデラック(ゼネラルモーターズ)が2028年からPUメーカーとして新規参戦する意向を示している(ホンダは2026年から”正式復帰”ではあるものの、現在も実質的にはレッドブル系2チームにPU供給中)。そして3社はそれぞれの参戦開始時期に向け、次世代PUの開発を既に開始している。 新レギュレーションへの対応は、2014年から導入された現在のV6ハイブリッドで経験を持つメルセデス、フェラーリ、ホンダ、ルノーにとってもチャレンジとなる。しかしフェラーリのグアルティエリ曰く、現行レギュレーションでのノウハウが無い状態で新規参戦を行なうメーカーにとっては、より難しいモノになるという。 実際、F1という舞台における技術的な蓄積はコース上の結果に現れるモノで、歴史を振り返れば、現在“チャンピオンPU”にまで上り詰めたホンダも、2015年にPUマニュファクチャラーとしてF1に復帰した当初は大苦戦していた。当時パートナーを組んだマクラーレン製シャシーとの兼ね合いも関係しているが、信頼性、パフォーマンス共にライバルPUメーカーから後れを取っていた。 motorsport.comの取材に応じたグアルティエリは、新規参戦PUメーカーが直面する課題について、次のように答えた。 「私は彼らの施設にいるわけでも、彼らの立場にいるわけでもないので何とも言えない」 「しかし結局のところ、このプロダクトの複雑さのレベルが高いのは確かだ。新しいプロジェクトの準備は、誰にとっても簡単なことではない」 「エンジニアリングの観点からデザイン、能力、技術だけでなく、ロジスティクスやインフラにも関連することを学び、創造する必要があるのは確かだから、彼らの仕事ぶりに敬意を示すことはできる。彼らは重要かつ大きな挑戦に直面しているのだ」 またグアルティエリは、既存PUメーカーにとっての新レギュレーションでのマイナス面として、2025年末までは性能開発が凍結されている現行レギュレーションにリソースを割く必要がある点を挙げた。 「我々サイドでは、明らかに違ってくる」とグアルティエリは言う。 「シーズン中の作業量を考えるとまだエネルギーが必要なのは明らかで、現在のプログラムに対応しなければならないのは事実だ」 「というわけで、このふたつは異なるチャレンジだが、どちらも我々が行なう仕事のレベルという点では、かなり高いよ」 ただレギュレーションによって、メーカーが現行PUにどれだけ作業を行なうことができるかどうかはある程度決まっている。 「新しいPUのコアパーツを開発する段階に入っているのは事実だ」とグアルティエリは言う。 「ただパーセンテージで見れば、簡単なことだ。結局、現在のテストベンチの稼働時間はある程度決まっていて、シーズンごとに少なくなっていくからね」 「今シーズンは、現行PUで使用できるテストベンチの稼働時間が減ることになる。現在のエンジンに投入するモノを、定義上は減らしていることになる。残りの全てを新しいプロジェクトとして進めることになるのは明らかだ」 「そういった課題はあるものの、我々は2024年シーズンに集中している。今年は史上最長のシーズンだからね」 「コンポーネント的にも、PU自体にとっても、それがどれだけチャレンジングなモノになるかは分かっている。だから我々は、これから始まるシーズンに集中している」
Adam Cooper