お正月の迎え方いまむかし 節目の年の無事を祈り、新年を寿ぐ
悲しい出来事やショッキングなニュースが多かった印象の年もなんとか終えて、平成30年という節目の年がいよいよ始まろうとしています。 どんなことがあっても、無事新しい年を迎えられるということは、それはそれは幸せなことではないでしょうか。今よりももっと生死を間近に感じた昔は、迎春の喜びに重みがあったことと思います。
ご先祖様を迎える正月
古来、正月にはご先祖様である歳神様をお迎えし、めいっぱいのおもてなしをして、今年一年もつつがなく私たちを御守り下さいとお願いしました。田んぼの守り神となったご先祖様を農耕休みの冬の間お迎えし、畑仕事の始まる頃に田んぼにお連れするという奥能登のアエノコトと趣旨はほぼ同じ趣旨です。
歳神様がそれぞれの家に無事到着できるようにと、目印として家の門先に立てられた若松が門松の起源といわれています。常緑の若松は常盤木とも呼ばれ、変わることなく子孫を守ってくれる歳神様の依り代でもあります。 京都などでは今でも、根のついたままの根引き松を門松として門前に用意します。根がついているのは、枯れることのない永遠の若さと繁栄を象徴しています。 門松とともに正月に欠かせないものといえば、鏡餅。今ではカビが生えないように真空パックになっていたり、プラスティックの鏡餅の型の中に、食べやすい切餅が入っていたりと、便利な時代になりました。
変遷する鏡餅
もともと、正月に歳神様に鏡餅をお供えする風習は、中国の膠牙餅が起源といわれる平安時代の宮中行事「歯固め儀」に由来します。年齢の「齢」の字には「歯」という字が含まれていますが、健康な体で長生きするためには、丈夫な歯を保つことが必須。歯ごたえのある餅などを食して丈夫な歯であることを確認し、さらなる健康を願ったのでした。 しかし、当時の鏡餅は、今とはまったく異なるものでした。平安時代、宮中では譲葉の上に大根、押鮎(鮎の塩漬け)、橘をのせて食していました。これは宮中雑煮といって、現在の汁気のある雑煮の原型と言われています。この他、猪、鹿などの肉、大根、勝栗などが盛られ、焼いた雉(きじ)肉を入れた雉酒を飲みつつ、鏡餅と共に食されました。