新型マツダ3のe-SKYACTIV X 2.0は実に素晴らしい日本車だった! 乗ればわかる“X”の魅力と進化に迫る
一部改良を受けた「マツダ3ファストバック」のe-SKYACTIV X 2.0搭載モデルは、乗れば乗るほどイイクルマだった! 小川フミオがリポートする。 【写真を見る】新型マツダ3ファストバックXツーリングの細部(16枚)
運転が楽しい!
マイナーチェンジを受けた新しいマツダ3ファストバックを、2024年12月に試乗した。乗ったのは2.0リッターエンジン+マイルドハイブリッド機構に、マニュアル変速機と4WDシステム組み合わせた「Xツーリング」。かなり楽しいクルマだ。 ファストバックとは、通常のセダンのような独立したトランクが目立たず、ルーフラインがテールエンドのほうまでゆるやかに傾斜していくボディスタイル。 マツダ3の場合、ハッチバックスタイルだが、あえてそう言わないで、よりスタイリッシュなボディを強調しているのが、デザインにこだわってきた同社らしい。ノーズが低く下がっているように見えるのも、いかにも走りがよさそうで好感度“大”だ。 24年8月に発表され、販売は10月頃からはじまっている今回のマイナーチェンジ版。上級グレードの「Xツーリング」(試乗車)における特筆点は下記の通り。 ・「アマゾン・アレクサ」搭載 ・「マツダ・オンラインナビ」搭載 ・後席の乗員取り残しなどを注意喚起する「リアシートアラート」採用 日常の使い勝手が向上している。たとえば、上記アレクサでは、エアコン、シートヒーター、ステアリングホイールヒーター、電話の受発信、ナビゲーションの目的地設定が音声操作可能だ。 アレクサは、さすがに使い勝手が悪くなってきた従来のマツダ3の音声認識システムの機能を補完する働きをする(はず)。ただし、利用にはコネクティッドサービスの契約が必要だ。今回はそういうわけで、残念ながら試せなかった。 試乗車の魅力は、しかし、そんなことは枝葉末節に思わせる。一言であらわすなら、ドライビングが楽しい。e-SKYACTIV X 2.0が搭載する2.0リッターエンジンは、140kWの最高出力と240Nmの最大トルクを発揮。たとえば同排気量のエンジンを手がけるメルセデス・ベンツ(125kW、250Nm)やBMW(115kW、240Nm)とほぼ同等だ。 下の回転域からトルクがしっかり出る。それでいて、フライホイールは軽めなので、アクセルペダルを軽く踏むだけで、シュンッとエンジン回転が上がる。それが、マニュアルとの相性がよく感じられるのだ。マツダ自身が「ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのメリットを兼ね備えました」と、述べるのも納得。 ちなみに、SKYACTIV Xは世界初の燃焼制御技術「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」を採用した、マツダの新世代ガソリンエンジンだ。とはいえ、フツーの人にはなかなか難しいメカニズムである。ただし、実際に運転すれば新技術の凄さを十分体感できるはずだ。 シフトノブの重さとシャフトのしなり感というのが、シフトフィールに大きく寄与するが、そこもよく考えられている。加えて、ゲートの感覚も短く、カチカチッとミスなくアップもダウンも行える。 クラッチをつなぐと同時にアクセルペダルをさっと踏み込むと、ボンッとはじかれたように、クルマが飛び出してゆく。エンジンは途中で力をなくすことなく、上の回転域まで回るので、自分の好みの回転域でシフトアップすれば、気分がアガる。 シフトダウンもやりやすいので、マニュアル変速機モデルを探しているひとには、かなり勧めたい。個人的には「マツダ2」の「15MB」というマニュアル変速機モデルも大好きなのだが、マツダ3のほうが万人向け。作りのクオリティも高い。 エンジンだけでなく、ハンドリングもよい。サスペンションとステアリングのバランスがよく、乗り心地は快適でありながら、カーブを曲がるときの車体のロールは抑えられていて、運転がたのしい。 車体の遮音と、履いていたブリヂストンのトランザがもつ静粛性の相乗効果で、走行中の車内は静かだ。後席はスタイルから考えているより空間的余裕がたっぷりあって、4人のおとなが長距離移動するのも苦にならないだろう。 総じて、マツダのクルマづくりの美点が凝縮したように感じられるモデルだ。車内のつくりは実直だが、試乗車の「ブラックレザーパッケージ」以外にも、テラコッタ(茶系)やレッドなどのシートカラーもあり、もしそれが選べるなら、このクルマを日常のパートナーとして乗るのが、もっと楽しくなるだろう。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)