【視点】「オール沖縄」の枠組み崩壊
衆院選で気になるのは、玉城デニー知事を支え、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力の行方だ。 辺野古移設反対の政策では共通するれいわ新選組が、1区と4区に独自候補を立てた。二つの選挙区では、辺野古をワンイシューに掲げ、さまざまな政党や団体の大同団結で求心力を維持してきた「オール沖縄」の枠組みが事実上崩壊した。 「オール沖縄」勢力は1区で共産現職を擁立しており、共産党の小池晃書記局長は「敵対行為」と怒りをあらわにした。一方、れいわの高井崇志幹事長は、共産が候補者調整に応じず、他の選挙区でれいわと競合していることを問題視している。 4区では「オール沖縄」勢力が、れいわも含めた候補者選考会議を立ち上げながら、最終的に立憲民主新人を候補者に選んだ。れいわは「結論ありきだ」と猛反発しており、れいわと「オール沖縄」勢力の溝は深い。 「オール沖縄」勢力の存在意義は、保守系の政治勢力も含めた野党共闘の実現にあった。既に保守層の離反が目立つ状態だが、1、4区では支持基盤である革新層からも、れいわ支持者が抜ける形になる。「オール沖縄」はもはや有名無実化していると言っていい。 「オール沖縄」勢力の一丁目一番地である辺野古移設反対も、各候補者が従来通り選挙の主要争点に掲げることができるか微妙な情勢だ。移設工事が進展し、有権者の関心が基地から経済にシフトしているためだ。 6月の県議選、9月の宜野湾市長選とも「オール沖縄」勢力は辺野古移設の是非を争点化できず大敗した。従来のように辺野古反対だけで一点突破するのは、もはや困難になっている。だが、辺野古にあえて触れない戦略に走れば「オール沖縄」の存在意義が問われる。 公示直前の「オール沖縄」勢力の現在地を見るだけでも、この政治運動が黄昏(たそがれ)を迎えているのは間違いなさそうだ。従来とは一変した環境の中で「オール沖縄」勢力がどう戦うのか、迎え撃つ自公はどのような戦略を取るのかが注目点と言えるだろう。 四つの選挙区とも、従来の「オール沖縄対自公」の構図は維持される。ただ1、4区のれいわだけでなく、2、4区には維新の会、1~3区には参政党が参戦した。1区では無所属元職も政治生命を賭けて再挑戦する。小政党の候補者擁立は比例票の上積みも念頭にあると見られるが、従来にない混戦だ。 4区の八重山や宮古では、従来から米軍基地問題は争点にならず、候補者は自衛隊配備問題や離島振興に力点を置いて主張を展開した。特に「南西シフト」と呼ばれる自衛隊増強の動きへの賛否は、今選挙も争点になりそうだ。 離島振興は「オール沖縄」県政下で停滞感が強く、地元では国と直結した経済活性化に期待する声が高まる。離島振興に国政はどう関われるのか、候補者の訴えに耳を傾けたい。