ついにNothingのイヤホンがChatGPT対応! 実機を試してわかったこと
イギリスのテックブランド、Nothingのスマホとワイヤレスイヤホンが4月18日に予告していたとおり、ChatGPT連携を果たしました。5月22日にスタートしたこの機能を実機で使い勝手を検証しました。 【もっと写真を見る】
イギリスのテックブランド、NothingのスマホとワイヤレスイヤホンがChatGPT連携を果たしました。今回は実機で使い勝手を検証しました。 Nothingのスマホとイヤホンが達成した「ChatGPT対応」 Nothingは4月18日にワイヤレスイヤホンの「Nothing Ear」と「Nothing Ear(a)」を発表した時に、ChatGPT対応を予告していました。当時6月初旬としていたサービス開始の時期を数週間前倒して、5月22日にスタートしました。 NothingのオーディオはNothing Ear、Nothing Ear(a)が最初に対応します。これにEar (1)、Ear (stick)、Ear (2)が続き、姉妹ブランドであるCMF by NothingのCMF Buds、CMF Neckband Pro、CMF Buds Proにも展開を予定しています。 NothingとCMFのオーディオはiOS/Android対応のモバイルアプリ「Nothing X」を導入すると、両プラットフォームを搭載するデバイスでイヤホンの機能がフルに使えます。音声アシスタントもiOSならSiri、AndroidはGoogleアシスタントが初期設定から呼び出せるようになっています。 残念ながら、モバイルアプリは今回のアップデートによるChatGPT対応の対象ではありません。つまり、NothingのスマートフォンとペアリングしないとChatGPT連携は使えません。Nothingは同社のデバイスどうしによるプレミアム機能として、ChatGPT対応を位置付ける戦略なのでしょう。 設定は簡単。日本語による音声応答にも対応 今回の検証を進めるためにNothing Phone(2a)を借りました。 デバイスのシステムが「Nothing OS 2.5.5.a」以降に更新されていればChatGPTの機能が使えます。アップデートに伴い、Nothingのスマホにはホーム画面にChatGPTアプリのウィジェットを追加できる機能と、スクリーンショット/クリップボードからコンテンツを直接ChatGPTのプロンプトにコピペできる機能も加わりました。 Nothingのデバイスが実現したChatGPT対応は、ChatGPTのモバイルアプリをスマホやワイヤレスイヤホンからスマートに呼び出せるというものです。そのため、スマホとイヤホンのファームウェアを更新したら、Google PlayストアからChatGPTアプリをダウンロードします。ChatGPTのユーザー登録を済ませていればログインもしておきます。 ChatGPTアプリはネットワーク接続が必要なので、Nothingのスマホが機内モードになっていたり、オフラインの時にはイヤホン連携の機能が使えません。 Nothing Xアプリから「コントロール」を選択して、Nothing Earの設定からChatGPTが使えるように該当箇所を変更します。「つまんで長押し」など任意の操作方法に「音声AI」を割り当てて「ChatGPT」を選択します。 ChatGPTは英語だけでなく、日本語による音声操作にも対応しています。アプリの設定で優先言語を指定すれば、言語の自動検出の精度を高めることもできます。 ChatGPTを「イヤホンによる使用」に最適化する必要がある リモコンからChatGPTを一度起動すれば、以降はコマンド入力待機の状態が続きます。スマホの画面を見ることなく、ハンズフリーのままチャットボットと連続で応答が交わせました。 筆者は無料版のGPT-3.5で試しましたが、日本語による応答は期待を超えて賢く実用的でした。ただChatGPTの仕様上、AI音声による日本語の応答はたどたしいです。AI音声は「そよ風」「残り火」「入り江」「ビャクシン」の4種類から選べますが、いずれもアクセントが日本語のネイティブスピーカーと少し違います。 Nothing Earが内蔵するマイクのピックアップ性能によるものなのか、よほど静かな場所でない限り、声を張らないと音声コマンドを正しく受け付けてもらえませんでした。音声からテキストへの変換に誤認識が頻発してしまい、スムーズな会話のキャッチボールになりません。他の言語と間違えることもよくありました。静かなカフェやオフィス、電車の中などでは大きな声を出しづらいので、ChatGPTとの音声によるやり取りは困難です。 ChatGPTからの回答も、尺が長くなると音声情報だけでは追い切れません。イヤホンによる使用を想定して、よりコンパクトに要約した回答を返す仕様に作り込む必要がありそうです。 Nothingがいち早くオーディオ機器をChatGPTに対応させたことには大きな意義があると思います。筆者が知る限り、Nothingはかなり早い段階でChatGPT対応のワイヤレスイヤホンを世に提案したブランドです。実機で試すと、課題は散見されるもののイヤホンとChatGPTの相性は悪くないと感じます。オーディオ機器による使用に最適化が進めば、便利な使い方も開拓されるのではないかと期待も膨らみました。 年内には多数のライバルが追随してくると思います。スマホとイヤホンの両方を展開する「Nothingらしい進化」が達成されることを楽しみにしています。 主なスペック 製品ジャンル ワイヤレスイヤホン ブランド Nothing 製品名 Nothing Ear 価格 2万2800円 形式 密閉 ドライバー 11mm口径セラミック振動板 ダイナミックドライバー Bluetooth LDAC/LHDC/AAC/SBC 連続再生時間 最大5.2時間(ANC オン)、最大24時間(ケース使用時) 筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。 文● 山本 敦 編集●飯島 恵里子/ASCII