悠生の命、無駄にしない「再発防止へ重い刑を」…放課後デイ中1死亡事故23日判決
障害がある子どもを預かる大阪府吹田市の放課後等デイサービス施設で2022年、安全管理を怠り、清水悠生(はるき)君(当時13歳)を溺死させたとして業務上過失致死罪などに問われた元職員の判決が23日、大阪地裁で言い渡される。判決を前に両親が取材に応じ、「命は戻らない。せめて施設側の問題点を認定し、再発防止につながる重い刑を」と訴えた。(伊藤孝則) 【画像】亡くなった清水悠生君
情報共有あれば
「身ぶり手ぶりで意思を伝えるようになり、親子でコミュニケーションがとれると思えた時に事故は起きたんです」。命日が過ぎた今月14日、母の亜佳里さん(43)は力なくつぶやいた。 豊中市の自宅には、遺影のそばに息子が好きだったアンパンマンのイラスト入りのクリスマス用菓子を置いた。父の悠路さん(48)も「寒い季節の川で溺れ、どれだけ苦しかっただろう」と悔しがった。 施設は「アルプスの森」(閉鎖)。児童の支援計画の責任者だった宇津雅美被告(66)が今年3月に在宅起訴された。起訴状では、22年12月9日、重度の知的障害や自閉症のある府立支援学校中学部1年の悠生君が送迎車から降りる際、施設の敷地外に飛び出すことを防ぐため職員2人で対応するなどの対策を怠り、職員が目を離した隙に近くの川で悠生君を溺死させたとしている。 「事故の真相を知りたい」と両親は被害者参加制度で出廷。宇津被告は公判で起訴事実を認めた。一方、検察側は、被告が悠生君の降車時に1人で対応させ、事故前に4回、悠生君が飛び出していたと指摘した。だが、施設側はそのことを両親に伝えていなかった。 「知っていれば、施設に通わせ続けるかどうかの選択もできた」。10月の被告人質問で、亜佳里さんは情報共有しなかった理由を何度も問うた。宇津被告は口をつぐみ、「大変申し訳ない」とだけ語った。施設側から事故に関する説明は今もないという。
事故相次ぐ
読売新聞が22年に実施した放課後等デイサービスに関する調査では、死亡・負傷などの事故が12年度の制度開始から少なくとも約4100件に上る。両親は昨年7月、悠生君の事故について伝え、再発防止を訴えるホームページを作った。悠路さんは「息子の命を無駄にしないためにも保護者にしっかり情報共有される仕組みづくりが進んでほしい」と願う。 宇津被告は他の利用者を殴ったとする暴行罪などにも問われている。検察側は「危機管理意識が欠落し、遺族の問いに答えないなど過ちを省みる姿勢が十分でない」と懲役1年10月を求刑。弁護側は「被告は悠生君への対応について職員を指導していた」とし、施設が閉鎖したことも踏まえ、執行猶予を求めた。 両親は「施設や被告の対応が不誠実だと感じ、苦しんできた。同じ立場の他の子のためにも再発防止につながる判決を」と語った。