令和のJ1ゴール1号は誰になる?
もうひとつのカードは、サンフレッチェの堅守とマリノスの攻撃力の攻防になる。第2節から5試合連続無失点を記録するなど、サンフレッチェの総失点5はFC東京と並ぶリーグ最少を誇る。しかし、直近の3試合ではすべて失点を喫し、連敗で3位に後退してしまった。 昨シーズンはしっかり守り、エースのFWパトリックが決めるパターンがはまった。後半戦では失速したものの、パトリックは最終的にリーグ2位の20ゴールをマークした。しかし、一転して今シーズンはコンディションが整わないのか。先発はわずか2試合で、1ゴールに甘んじている。 方程式が崩れたなかで、それでも5連勝をマークした頑張りは評価に値する。ただ、第7節以降の3試合で喫した4失点のうち、3つを前半に許している状況を考えれば、城福浩監督のもとで貫かれてきた、サンフレッチェの堅守速攻にかげりが見え始めていると言っていい。 そうした隙をマリノスは見逃さない。アンジェ・ポステコグルー監督のもとで昨シーズンから取り組んできた、リスクを冒してでも攻撃力を前面に押し出す痛快なスタイルは、今シーズンも13得点に対して12失点と出入りの激しい数字として現れている。 13得点のうちに前半にあげたのが8を、12失点のうち前半に喫したのが7を数える。サンフレッチェ戦でも取られたら取り返すサッカーを仕掛ける。ゴールの最短距離にいるのは直近の4試合で4ゴールをあげているエース、マルコス・ジュニオールとなるだろう。 マリノスのスタイルが諸刃の剣であることを考えれば、サンフレッチェもカウンターからチャンスをつかむ可能性もある。パトリックの出場が微妙な状況では、左サイドから切れ込んでシュートにまで絡み、チーム最多の3ゴールをあげているMF柏好文がクローズアップされてくる。 もっとも、両者が拮抗したまま、埼玉スタジアムに続いてこちらもスコアレスで前半を折り返すようなら、午後3時キックオフの2カード、川崎フロンターレvsベガルタ仙台(等々力陸上競技場)、鹿島アントラーズvs清水エスパルス(カシマサッカースタジアム)に関心が移ってくる。 そのなかでも、28日のヴィッセル神戸戦で待望のリーグ戦初ゴールをゲット。23日の蔚山現代FCとのACLに続く公式戦連続ゴールを決め、上昇気流に乗ってきた2017シーズンの得点王、フロンターレのFW小林悠の存在感が一気に増してくる。 平成が幕を開けた1989年は、前身の日本リーグが行われていた。平成初ゴールも含めて、ほとんど皆無だったサッカーに対する関心が一気に増したのは、Jリーグが産声をあげた平成5年。旧国立競技場で1試合だけ行われた5月15日の歴史的な開幕戦、ヴェルディ川崎と横浜マリノスで誰が最初にゴールを決めるか――だった。 ファンやサポーターの圧倒的な支持を集めたのは、日本代表でもエースを担い、新時代の寵児となっていたヴェルディのカズ。果たして、前半19分にペナルティーエリアの左外から豪快な一撃を突き刺し、歴史に名前を刻んだのはヴェルディのFWヘニー・マイヤーだった。 元オランダ代表のマイヤーは来日直後にアキレス腱を痛め、開幕直前にトップチームへ合流したばかりだった。約2ヵ月には解雇されて帰国した男が、いまも語り継がれるのだからスポーツはわからないし、だからこそ面白い。果たして令和の幕開けには、どのような筋書きのないドラマが生まれるのだろうか。 (文責・藤江直人/スポーツライター)