新型フォルクスワーゲンID.Buzz GTXは新世代のミニバンだ! パワフルな現代の“ワーゲンバス”に迫る
フォルクスワーゲンの新型「ID.Buzz GTX」のロングホイールベースモデルに、小川フミオがドイツ本国で試乗した。 【写真を見る】新型ID.Buzz GTXの内外装など(26枚)
広くて居心地の良い室内
これはミニバンの革命になるか? フォルクスワーゲンが送り出したID.BUZZ(アイディーバズ)。キュートなルックスのバッテリー駆動車として欧州では人気が急上昇中。24年7月に、新登場のパワフル版であるGTXに試乗した。期待以上にスポーティだ。 ID.Buzz GTXは、従来のID.BUZZ(22年欧州で発売)をベースに、ツインモーターで4輪駆動化したモデルとして、24年5月にドイツで発表された。同時に3列シートのロングホイールベース版も発表されていて、シングルモーターと標準ホイールベースと合わせると4通りの組合せが選べるようになった。 ID.Buzz GTXのいいところは、広くてクリーンで質感の高い室内(かつ静か)で、新世代のミニバンかくあるべし、というような提案性の高さにあると思う。 従来の2列シート車もけっして悪くなかったが、米国を中心に3列シート車の需要が高いことをフォルクスワーゲン(VW)では当初から理解していて、開発に精力を傾けた結果、今回の4モデル体制へとこぎつけた。 私がドイツで乗ったのは、ID.Buzz GTXロングホイールベース。GTXは「4MOTION(フォーモーション)」と呼ぶ、全輪駆動システムと、パワフルなパワートレインを持つ。86kWhと大きな容量のバッテリーにより、トータル出力は250kW(340ps)、最大トルクは580Nmに達する。 もうひとつの特徴が、余裕あるサイズ。3239mmのホイールベースを持ち、ボディの全長は4962mm、全幅は1985mm、全高は1927mmとなる。それでいて車体の空気抵抗を表すCd値は0.29と低い。 空気抵抗をいかに低くするかは、スポーツカーからミニバンにいたる昨今の自動車の大きな課題。そこにあって、流麗とはいいがたい印象のID.Buzz GTXなのに、こんなに良好なCd値とは、フォルクスワーゲンの高い技術力を感じさせる。 室内はさきにも触れたように、広くて居心地がたいへん良好。ドライバーズシートに座ると、すっきりしたダッシュボードと、大型モニターと、小ぶりのグッドデザインの計器盤のみ目に入る。ハンドルは乗用車と同様に立っていて、大きめサイズのミニバンを操縦している印象はない。 2列目シートには、ロングホイールベースに合わせて大型化した電動スライドドアからアクセスする。左右に格納式アームレストを備えたキャプテンシートで、座り心地いい。大きく前後スライドする機構も備わり機能性が高い。 足元にオットマンが出てきて、ベッドのようにリクライニングする……なんて装備はないけれど、ホールド性が高いから長い距離の移動でも休息がとれると思う。私はドイツで2時間ほどのドライブを後ろの席で経験したが、よく出来たシートと感心した。 3列目にもふたり分のシートが設けられている。ヘッドレストレイント(ヘッドレスト)とバックレストの一部が一体化したパーツが上下スライドによる格納式となっている。使わないときはドライバーが使うリヤビューミラーの視界をさまたげない。使うときは、その部分を上にスライドさせれば完全なシートとなり、180cmの人間でも無理なく座っていられる。 そもそもフォルクスワーゲンの商用車部門が開発を担当し、商業車として使うのが前提だっただけあって、荷室は広い。3列目シートを使った状態で306リッターを確保。3列目シートをたたむと1340リッターに拡大し、さらに2列目シートをたためば、2469リッターと、広大な荷室空間が生まれる。乗用車版でも、アウトドアや自転車、バイクなど趣味を持つひとには、ありがたいだろう。