ついに菅前首相の「岸田降ろし」が始まった…焦る岸田・麻生・茂木の次の一手
「河野カード」誕生の先行きは
ところが、何と麻生派の河野太郎デジタル相が26日夜、麻生氏を誘って都内赤坂の日本料理店「たい家」で会食したのだ。総裁選出馬の意欲を隠さない河野氏が麻生氏の了解を取り付けるべく長広舌をふるうも麻生氏は最後まで首肯しなかったという。 「河野カード」誕生の先行きは不透明である。 菅氏のタイミングを計ったメディア露出も際立つ。23日夜の文藝春秋電子版オンライン番組に出演、インタビュアーの質問「総裁選で新たなリーダーが出てくるべきか」に対し「そう思う」と答え、誰を推すかについては「まだ決めていない」と述べた。事実上、首相交代に言及したに等しい。 さらに26日発売の月刊誌「Hanada」(8月号)のインタビューでも「自民党には若い優秀な議員が少なくない。(総裁選で)しっかり政策を戦わせ、議論すべきだ」と語っている。国会議員に党員・党友を交えたフルスペックの総裁選への期待を滲ませた。 菅氏は中堅・若手が擁立の動きを見せる小林鷹之前経済安全保障相(衆院当選4回・旧二階派・財務省OB)を含め4、5人が立候補する総裁選を想定する。再選を目指す岸田氏もカウントしている。第1回投票で過半数を獲得するのが難しいとされるだけに、総裁選の過程で最も話題を集めて勢いを見せた候補を担いで岸田氏との決選投票に臨む。これが菅氏戦略ではないか。 ここで冒頭の岸田・麻生会食に戻る。このように「総裁選劇場」のメインプレイヤーの活発な動きが目立つ中、自民党ツートップの周辺取材を行った。岸田氏にとって事はそう簡単な状況にないという指摘が過半だった。麻生氏は岸田氏の再選支持スタンスから今も後退したままだというのである。 危機感を抱いた岸田氏が2週連続で長時間会食をセットしても説得は奏功していない。次なる手は、岸田氏自らが茂木氏に声掛けして関係修復を果たすことで麻生氏を繋ぎ留めることに注力するのではないか。それにしても当分間、オフコースの「眠れぬ夜」(小田和正作詞・作曲)が続きそうだ。
歳川 隆雄(ジャーナリスト)