〝短時間正社員〟の求人、じわじわ増加 企業と働き手のニーズが合致 主婦層も希望「カバーしきれてない」
足元の採用で手いっぱい…でも中長期的に見ると
政府も、厚生労働省の「多様な働き方の実現応援サイト」の中に「短時間正社員」の説明ページを設け、「導入マニュアル」を整備するなど、企業に推進していることがわかります。 ただ、厚労省の2023年度の雇用均等基本調査の「育児のための所定労働時間の短縮措置などの制度の導入状況」をみると、「短時間勤務制度」は2022年度の71.6%から直近の2023年度は61.0%と減少しています。 質問が、制度導入理由を「育児」だけに絞って聞いているため、全体感は異なる可能性がありますが、桜井さんも「短時間正社員の導入はまだまだこれからという感じ」といいます。 今後、短時間正社員という雇用形態が広がっていくには、企業側の人事評価や報酬制度などの整備が必要だと桜井さんは指摘します。 「現在は目の前の人材不足に対応するため、内定辞退の防止などで人事はいっぱいいっぱいです。ただ、短時間正社員など多様な働き方を準備することは、中長期的な人材不足解消に効いてきます。そこにどれだけのパワーを割けるか、会社の向き合い方が問われています」 また、桜井さんは「若い世代は、パラレルワークやマルチジョブなど、複数の仕事を並行して行う働き方が身近になっています」といいます。彼らが結婚・育児など生活の変化に直面する今後10年以内には、さらに短時間正社員としての働き方のニーズは高まると見込んでいます。
「勤務時間については相談に乗ります」
求職者からのニーズに応じて、今年初めて「短時間正社員」を雇用したところもあります。 社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズの代表・中嶋美緒さんは、6年ほど前から採用活動を担当しています。キャリアを積んできた30代を採用したくても、子育ての都合で柔軟な働き方を希望していることに気づいたといいます。 「30代の求職者から、『子育てがあってフルタイムで働けない』『時間の融通はききますか』などと聞かれることがありました」と話します。 フルタイムで働ける人材として、子育てが一段落した世代の採用をしたこともありましたが、業務のIT化に即応できなかったケースもあったそうです。 その結果、「ITリテラシーの高い若い世代の採用」を達成するため、募集内容を「勤務時間については相談に乗ります」という姿勢に変えました。 そうして無事採用につながった初の短時間正社員の女性は、未就学の子ども2人を育てながら、週5日、1日5時間の勤務で働いています。