サングラス(11月3日)
〈太陽のせいだ〉。フランスの作家カミュの代表作「異邦人」の主人公は、人を殺[あや]めた理由に陽光のまぶしさを挙げた。日差しが遮られていたならば、世界的な不条理文学は違った展開をたどったかもしれない▼秋の深まりとともに太陽の位置が低くなり、西日をまぶしく感じる時間が長くなった。光が正面から差し込むと、幻惑される。車間距離が短くなっていたり、歩行者に気づくのが遅れたり…。そんなヒヤリ体験はしたくない。サングラスを上手に使いこなそう▼柔軟な対応は注目を集めそうだ。県警や郡山地方広域消防組合は、屋外活動でのサングラスの着用を認めた。直射日光や照り返しなどによる視界不良を防ぎ、目を守る。これまでも使用を禁じる決まりはなかったが、慣例的に身に着けていなかった。表情全体が分からないと、なんとなく警戒してしまう。市井の視線に配慮してだったか▼「色眼鏡」で見てはいけない。目の負担となる紫外線や青色光線をカットしてくれる。ちょっぴりこわもてに映るが、その効用もあらためて認識したい。万が一、事故を起こしても「太陽のせい」にしないよう。黒いレンズの奥から、周囲にくまなく優しい視線を送る。<2024・11・3>