夢に終わった鶴田VS藤波 昭和と違って令和は夢対決も実現 清宮VS辻の再戦に期待
【柴田惣一のプロレス現在過去未来】
来春1・4東京ドーム大会のカードが次々と決まっていく。新日本プロレスの次代を担う辻陽太は、IWGP GLOBALヘビー級王者デビッド・フィンレーに挑戦することが決定的だが、忘れてはいけない相手がいる。 【動画】清宮海斗vs辻陽太 G1クライマックス33開幕戦で辻がいきなり仕掛ける ノアの頂点GHCヘビー級王座に君臨する清宮海斗である。「きよぴーじゃなくて、きよぴな!」と辻に「きよぴー」呼ばわりされ、いち早くSNS・Xで反論しているのだ。 ことの発端は新日本10・28東京・後楽園ホール大会。鷹木信悟と組んで、ザック・セイバーJr、大岩陵平組と対戦した辻がジーンブラスターで大岩にフォール勝ちを収めた。 そして「NOAH育ちの大岩君。お前のNOAH遠征はどんなのだったんだ。さぞ甘やかされてきたんだな。でも、お前の責任じゃない。きよぴー、お前の責任だ」と、いつもの笑みを浮かべながら言ってのけた。 大岩は清宮から声を掛けられ昨年9月から1年間、NOAHに留学していた。清宮とのコンビでタッグリーグ戦を制するなど結果を残し、海外遠征に代わる新たな武者修行ルートの魁とされている。 それをあっさりと否定した辻。落ち着いた口調でこき下ろす舌鋒には定評があるが、今回は「俺はプロレスを通して、そいつの人生や経験が見える」と前置きされての「きよぴー責任論」だった。 これには清宮も黙っていられない。「辻、陵平は必ずお前にリベンジするよ。1年間のNOAHでの修行を甘く見ない方がいいぞ」とXに書き込んだ。 「きよぴー」なのか「きよぴ」なのか、はともかく大岩も感謝していたNOAH修行を否定する辻のコメントは、清宮は聞き逃すわけにはいくまい。 昨年のG1クライマックスで清宮と辻は対戦している。2023年7・15北海道・札幌大会でのAブロック公式戦だった。 決戦前には辻がNOAHの会場を訪れていた。若くしてNOAHの看板を背負っていた清宮に、新日本の新時代を期待されている辻。両者の対決には注目が集まったが、昨年7月は清宮の勝利に終わっている。 辻は今年3月、NEW JAPAN CUPに優勝するなど、海野翔太らとの出世レースの先頭を走っている。NOAHの清宮に敗れたままでは、とても我慢できないはず。 大岩の動向もあって「きよぴーが悪い」となったのだろう。辻と清宮のリマッチの行方が気になるところだが、思えば選手同士がSNSを利用して“直接対決”する時代になったのだ。 かつては新聞や雑誌などメディア上でのやり取りが主だった。表での丁々発止の舌戦はもちろん、水面下での交渉も“仲介人”が間に入ることが多かった。 BI馬場・猪木時代の次期エースだった全日本のジャンボ鶴田と新日本の藤波辰巳(辰爾)の「夢の対決」も、マスコミを騒がせファンをワクワクさせた。当時の両団体のファンは熱く過激だった。鶴田ファンは「体の大きさやスタミナが違う。鶴田の圧勝」と言い、藤波ファンは「テクニックでは藤波の方が上。第一、新日本の方が練習は格段に厳しい」と主張。が、結局は夢のままで終わってしまった。 鶴田が「マスコミを使っての対戦要求ではねぇ。向こう(新日本)のペースに乗せられちゃう。紙面(誌面)ではなく、藤波選手が直接、言ってきてくれたら、事態は変わったかも。対戦してみたかったよね。」と振り返ったことがある。SNSでの直接対話が当たり前の今なら、夢の対決が現実のものになっていたのだろうか。 辻と清宮の抗争の行方を思い描きながら、鶴田の言葉を思い出した。(敬称略)
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