タンスにあった12年前のボールはまだ使える?/ゴルフの疑問調査隊・ボールの賞味期限
伊丹プロは弾道の違いをあまりないと感じたが、計測器が表示する数字は残酷だった。初代モデルは現行に比べてキャリーでおよそ16ydもの差をつけられてしまったのだ。ボール初速はほぼ同じだが、バックスピン量が顕著に異なる。飛び方は変わらなくても、キャリーを生むスピン量が減ってしまったのだ。
マシーンテストよりも大きな差が出たのは何故だろうか? 「人が打ったことによるものだと考えます。ボール初速はほぼ同等ですが、打撃条件の違いで初代はフック回転が強くなった。そのためバックスピンが減り、キャリーが少なくなったと考えます」(小松氏)
古いボールは"感触"が大きく変わってしまう
続いて、9番アイアンとアプローチショットを打ってみる。結果を見ると、飛距離はドライバーほどの差はなかったが、手に伝わる感触はドライバーよりも大きな違いがあったという。「9番アイアンですが、やはり現行モデルのほうが軟らかいです。手に伝わる感触が大きく異なりました。硬くなった初代は、コースで力みそうですし、それを嫌がって緩みのミスも誘発するかもしれません。コースで気持ちよく打てるのは、やはり現行モデルです。アプローチショットもほぼ同じで、打感の差は明らかでした。硬くなった初代は、アプローチで一番大事な飛距離のコントロールが難しい印象です」(伊丹プロ)
新旧モデルを打ち比べた伊丹プロによれば、「ドライバーの飛距離は落ち、グリーンを狙うショットでは望んだ飛距離を出しにくい」とのこと。古いボールでプレーできないことはないが、気持ちよくはないだろう。テストを見守った小松さんに全体的な感想を聞いてみた。 「PHYZの構造は、コアが最も軟らかく、外側にいくほど硬くなっています。ドライバーのスピンを減らすためと、アプローチではスピンがあまり要らないからです。全体的に軟らかくすることでつかまりがよく、気持ちよく飛ばせるボールを目指してきました。それが古くなると、感触も含め思っていたより大きな性能低下が起こることが分かりました」(小松氏) もしも古いボールを使うなら、性能低下を覚悟しなければならない。せっかくのゴルフ、気持ちよくプレーしたいならボールは新しいものを使うに越したことはないだろう。「ボールは空気に触れているだけで性能が低下するのですが、もしも水に浸かっていたのなら…性能低下は空気の比ではないほど短時間で起こります」(小松氏)。ウォーターハザードに浸かりっぱなしのキレイなボールを拾っても、プレーで使うのは控えた方が良さそうだ。(編集部・中島俊介)