三菱UFJの新首脳人事が大詰めも…発表時期をうかがう「2つの要素」(小林佳樹)
【経済ニュースの核心】 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で今月中にも、来年4月からの新首脳人事を発表する見通しだ。MUFGの会長、社長、中核会社である三菱UFJ銀行の会長、頭取の、いわゆる「トップ4」のみならず、「グループの信託銀行、証券会社の首脳人事も同時に発表する準備を進めている」(三菱UFJ関係者)という。 三菱UFJはネット証券再編で劣勢挽回なるか…“消える”auカブコム証券 だが、その発表時期に呻吟しているという。悩ましい要素は2つある。まず1つ目は、支店の貸金庫から顧客の現金や貴金属を盗んだとして、貸金庫の管理を担当していた女性行員(店頭の業務責任者)を懲戒解雇した件だ。11月22日に発表されたが、元行員は2020年4月から24年10月の4年半にわたり、東京都の練馬支店(旧江古田支店を含む)、玉川支店の2支店で貸金庫を無断で開け、顧客の資産を繰り返し盗んでいたとされ、10月末に貸金庫を使っている顧客からの指摘によって発覚したという。盗まれた資産は顧客約60人分、被害総額は十数億円に上るとみられている。 司法関係者によると、元行員の行為は「窃盗罪」が成立する可能性が高いという。また、元行員は被害者に対し民事上の損害賠償責任を負うが、被害金額を元行員が個人で賠償できるとは考えにくいことから、「三菱UFJ銀行が使用者責任に基づき損害賠償を行うことになる」(弁護士)とみられている。 この事件について、「被害の全容、罪状が見えてきた段階で、経営陣による記者会見が行われるのではないか」(メガバンク幹部)とされる。 だが、その前に、来春のグループ各社の首脳人事の記者会見を開けば、「晴れがましいトップ交代会見の場が、事件追及の場に変わりかねない」(同)と懸念されている。 呻吟するもう1つの要素は、首脳交代が来年4月からの全銀協会長人事と重なる点だ。「三菱UFJは来年4月から全銀協会長に就くことが決まっているが、誰が就くのかは未定となっている。通常であれば三菱UFJ銀行の頭取が就くことになるが、来年4月に頭取が交代して、すぐに全銀協会長では荷が重いのではないかと心配されている」(同)というのだ。このため、「三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取が持ち株会社のMUFGの社長に昇格して、そのまま全銀協会長に就任するケースも考えられる」(同)との見方もある。 指名委員会等設置会社となっているMUFGは社外取締役を中心に構成する「指名・ガバナンス委員会」が取締役の選解任を決める。5人の委員のうち、亀澤宏規社長以外の4人が社外取で、委員長は筆頭独立社外取締役の野本弘文氏(東急代表取締役会長)が務める。 すでに同委員会はサクセッションプラン(後継者計画)に基づき、11月から亀澤社長の後任人事と三菱UFJ銀行を中心としたグループ各社の首脳人事に向けた大詰めの議論に入っている。後は、発表のタイミングだけなのだが……。 (小林佳樹/金融ジャーナリスト)