7割が外国籍、グローバル化する令和の「夜間中学」 民族や宗教も多様、給食は禁忌食対応
7割が外国籍、変化する生徒層
文部科学省によると、日本には夜間学級(いわゆる夜間中学)が53校ある(2024年4月現在)。何らかの理由で十分な義務教育を受けられなかった人が年齢や国籍を問わず通うことができ、すべての課程を修了すれば中学校卒業資格を得ることができる学校だ。1993年公開の映画『学校』(山田洋次監督)によって世間的に知られるようになり、当時の国会でも取り上げられて注目された。それから30年余りが経ち、「令和の夜間中学」に新たな波が押し寄せている。 【表を見る】夜間中学に通う外国籍の生徒と国籍は多様。中国、ネパール…… 7月上旬、午後5時過ぎ。映画『学校』のモデルになった荒川区立第九中学校では、夜間学級の生徒たちが登校し始めていた。 同校の夜間学級には34人の生徒が在籍(7月1日現在)し、午後5時30分から9時10分まで、週5日の義務教育が行われている。教科は英語、国語、数学、理科、社会だけでなく音楽や美術、体育などもあり、授業時数がやや少ないだけで通常学級と変わらない。異なるのは、生徒の年齢が10代から70代までと幅広く、その多くが外国籍であることだけだ。 同校の校長・奥秋直人氏は「映画で田中邦衛さんが演じたような、貧困や戦争の混乱で学校に通えなかった生徒は、現在は非常に少なくなっています。近年は外国で生まれ育ち、日本で働く親に呼び寄せられた外国籍の生徒や、不登校などの理由による学び直しの日本人生徒が増えています。今はイメージ的には少人数のインターナショナルスクールに近いかもしれません」と生徒層に変化が起きていると明かす。 文部科学省の「令和4年度(2022年度)夜間中学等に関する実態調査」によると、夜間中学に通う全生徒数は1558人、そのうち日本国籍を有しない生徒数は1039人。外国籍の生徒が66.6%を占めている。国・地域別の上位は中国344人(33.1%)、ネパール233人(22.4%)、韓国・朝鮮121人(11.6%)、フィリピン113人(10.9%)、ベトナム52人(5.0%)で、パキスタンやアフガニスタン、シリアなどイスラム教国の生徒も珍しくない。 映画『学校』が公開された時には、すでに外国籍の生徒は一定数在籍し、当時は在日韓国・朝鮮人や中国残留邦人の家族、インドシナ難民などが多かったとみられる。しかし、現在は国籍の多様化が著しく、とくに都市部ではネパール人生徒が急増しているという。同校でも数年前からネパール人生徒が半数を超え、都内の他の夜間中学でもマジョリティーになっている。