「こんなはずじゃなかった…」念願のマイホームで一生後悔。一級建築士が明かす「とりあえず住宅展示場」が危険なワケ
「こんなはずじゃなかった」 念願のマイホームを建てたはずなのに、暮らすうちにこう思ってしまう人たちがいます。たくさんの夢と希望を詰め込んで家を建てたにもかかわらず、後悔しまう人は少なくありません。「大成功の家づくり」と、「“こんなはずじゃなかった”家づくり」は、いったい何が違うのでしょうか? 2000軒以上の住宅を手がけてきた一級建築士・内山里江さんの書籍『家は南向きじゃなくていい』では、「家づくり」に失敗する理由、そして「世界にひとつの理想の家」への一歩を踏み出すアドバイスをお伝えします。 【間取り図付きで詳しく解説】40代夫婦が老後のことまで考えた「間取り」に潜む落とし穴
「とりあえず住宅展示場」という罠
<家を建てたい人が最初にやること> 「マイホームがほしい」「家を建てたい」と思ったとき、みなさんは最初に何をするでしょうか? おそらく、「とりあえず住宅展示場に行ってモデルハウスを見てみる」という人は多いのではないでしょうか。誤解を恐れずに言うと、実はこの「とりあえず住宅展示場」が、家づくりの失敗への入り口になることがあります。「えっ、どういうこと?」と思われたかたもいるでしょう。「いろんな家を見られてイメージが膨らむし、複数のハウスメーカーをその場で比較検討できて便利」というのが一般的なイメージですから、無理もありません。実際、それは間違いではありません。では、何がまずいのでしょうか。 それは、「建築士としっかり意思疎通しながら家づくりを進めていく」という機会が少なくなってしまうことです。住宅展示場に出展しているのは大手のハウスメーカーばかり。建築設計事務所が出展していることはありません。つまり、住宅展示場へ行くのは「ハウスメーカーを選ぶための行為」なのです。なぜそれが、理想の家づくりからかけ離れてしまう危険を招くのか。次からくわしく説明していきます。
言われた通りに設計するのはプロではない
本来、建築士とは「家づくりのプロ」です。家にまつわるすべてを知っていないと務まりません。しかし、ハウスメーカーに所属している建築士の多くは、非常に狭い範囲でしか家づくりに携わることができません。 なぜなら、「合理的な間取りや機能がベースになった家」を「たくさん」供給することが、市場から求められるハウスメーカーの役割だからです。ゆえに、ハウスメーカーの社員またはハウスメーカーに雇われた建築士は、「今回の建て主はどんな性格で、どんな生活を望んでいるのか」「今回の土地の周辺環境はどうなっているのか」などをふまえ、じっくりコンセプトを考えて建て主と向き合い設計する前提で仕事をしてはいないのです。 また、ハウスメーカーの建築士には若い人も多く、経験がそこまで豊富ではないケースも少なくありません。経験値の低さによる不安から、営業担当者が建て主から聞き出した「希望条件」をそっくりそのまま図面に落とし込むケースもあるようです。 たとえば「庭に面したリビングに大きな窓がほしい」と言われれば、その通りに描きます。たとえ、その庭ごしに隣の家から丸見え状態の環境だったとしても、です。住んだ後にカーテンを閉め切る生活になる可能性に気づいたとしても、口をつぐみます。 仕事柄、ハウスメーカーの建築士の話を聞く機会もありますが、みな「やりたいことができない」「言われた通りに描くしかない」と声を揃えます。営業主導の合理的な家づくりのプロセスにおいては、建築士のオリジナルの設計アイデアを盛り込むといった思い切ったチャレンジをする機会はなかなかありません。そのせいでスキルもなかなか育たないようです。同業者として、とても悲しいことだと感じます。