涙ぐむ男性も...フェミニズムの象徴になった“テニス史に残る男女対抗試合”
バラク・オバマ元大統領の言葉
あれから50年が過ぎたが、バトル・オブ・ザ・セクシーズの話題が出ない日は一日としてない、と言っても決して大げさではない。いまでも女性たちは、どこであの試合を観たか、私が勝ったときどれほどうれしく、どれほど励まされたか、私に話してくれる。 感極まって声を詰まらせながら「ありがとう......あなたはいろんな可能性を拓いてくれました......あなたのおかげで私の人生は一変しました」と話しかけてくる女性がたくさんいるのだ。 競争で女が勝ってもいいのだとようやく安心したとか、男の子に勝つのは男の子でなくてはいけないなんてことはないのだと自信を持てるようになったとか。なかには、やろうと思えば何だってできるのだと初めて信じられたという人もいる。 こう言うと驚く人も多いが、目に涙を浮かべて話しかけてくる男性もたくさんいる。彼らはこう言う。 「ビリー・ジーン、子供のころにあの試合を観ました。いまは娘を持つ父親です。あの試合が私を変えました」 その一人がバラク・オバマ元大統領だ。ホワイトハウスの大統領執務室で初めて面会したとき、彼はこう言った。 「ご存じないと思いますが、あの試合を観たとき、私は12歳でした。いまは娘が二人います。あの試合は、二人をどう育てるべきか教えてくれました」そういう話を聞くと、最高の気分になる。 自分に娘が生まれるまで、性差別について理解していなかった、あるいは考えたことさえなかったが、娘を持って初めて「この子の未来にもやはり苦労が待っているのだろうか」と疑問を覚えたという男性も大勢いる。娘を持って初めて性差別撤廃に向けて自分も行動しようと考えるのだ。 あの試合のあと、小さな男の子からもよく話しかけられるようになった。 「いつかあなたみたいな強いテニス選手になりたいです」 少年たちは、私を女という以前にアスリートとして見ていた。
ビリー・ジーン・キング(テニス選手)