楽天、携帯電話契約者増で迫る黒字化 ソフトバンク社長「物価に応じた値上げくらいは」
楽天グループが13日発表した2024年1~9月期連結決算は、純損益が1503億円の赤字だった。1~9月期の赤字は6年連続で、携帯電話事業が引き続き重荷となった。ただ、7~9月期でみると、携帯事業の赤字が縮小し、営業損益が5億円の黒字(前年同期は544億円の赤字)に転換した。四半期ベースでの営業黒字は、携帯電話に本格参入した20年4~6月期以来、約4年ぶり。 【ひと目でわかる】携帯契約の「踏み台」行為増加 ポイント目当てに短期間で乗り換え 「モバイルも将来的なビジョンが立つようになってきた」 オンラインで行われた13日の決算説明会で、楽天の三木谷浩史会長兼社長はこう語った。携帯電話事業の赤字がグループ全体の収益を押し下げる中、楽天では三木谷氏が自ら音頭を取って法人契約などを獲得し、グループ社員総出で営業活動に当たっている。仮想移動体通信事業者(MVNO)などを除いた携帯電話の契約数は、11月10日現在で741万回線と、黒字化の目安としてきた800万回線に近づいている。 一方、楽天に追われる大手3社の24年9月中間連結決算で純利益が増益だったのは、ソフトバンクのみだった。楽天が携帯電話で攻勢をかける中、政府主導の料金値下げが尾を引いている形だ。ソフトバンクは、大容量の主力ブランドでスマートフォン決済のペイペイでのポイント還元施策などを実施し、格安ブランドの少ない通信容量に不満を感じている顧客に移行を促したことが奏功。ソフトバンクは25年3月期の通期業績予想を上方修正した。それでも宮川潤一社長は8日の決算会見で「物価に応じた値上げくらいはできるようになってほしい」と本音をこぼした。一方で「売られたけんかは買いたい」とも語り、ポイントなどの還元競争に応じる姿勢をみせた。 また、KDDIは国際通信やデータセンター運営などの海外事業が為替相場の変動で収益の押し下げ要因となり、最終減益となった。ただ、個人向け事業は堅調で営業増益は確保しており、携帯電話の契約者に銀行や証券などのグループ内の金融事業を利用してもらう連携を強化する構えだ。金融サービスを利用すれば料金の割引が受けられる「auマネ活プラン」について、高橋誠社長は「次の一手を考えている」と自信をのぞかせる。 劣勢に置かれているのが営業減益となったNTTドコモだ。ドコモは格安ブランドの展開で出遅れ、顧客が流出。第5世代(5G)移動通信システムのエリア構築に失敗し、低下した通信品質の改善費用もかさむ。低価格プランの強化で1人あたりの売上額よりも契約数の回復を優先しているのが現状で、収益の改善には時間がかかりそうだ。(高木克聡)