親父、たくさん遺してくれてありがとう…〈年金月24万円・退職金2,000万円〉分相応の老後を送る67歳長男だったが、90歳・我が子を想う父の死で一転、破滅へ。元凶となった「遺言状の中身」【FPの助言】
資産相続について生前に行っておくべきこと
今回、鎌田さんが相続をきっかけに生活資金を失ってしまった理由は、不動産経営を知らないまま相続してしまったことです。 「子供達に賃貸物件を遺して年金の代わりに……」このように考えて子供に賃貸物件を相続財産として遺す人も多いようです。不動産を上手く活用することで相続税の圧縮にもなり、家賃収入を生む資産になるためです。 しかし、不動産経営はあくまで「経営」です。どういった経費が掛かるのか、いつ、どのくらいのお金が出入りするのか、こういった資金繰りの管理をせずに入ってきたお金を使ってしまうと、鎌田さんのように手元のお金を使い過ぎてしまうことがあります。 また、古くなれば安易に家賃を下げるのではなく、家賃を下げなくても入居者が入ってくれるように屋根や外壁、室内のリフォームのためにお金を掛けたほうがいいのか、まずはそういった検討をするなど、経営判断が必要となります。資金管理や経営ができない人に不動産を手渡してしまい、今回のようなことになってしまう事例は少なくありません。「我が子だから大丈夫、きっと自分で調べてきちんとやっていくさ」という楽観的な考えで我が子を苦しめる事態になっては、本末転倒でしょう。 高い相続税を払うことになったとしても、現預金や生命保険などで遺したほうが、のちのトラブルは少ないものです。生前に相続対策を考えるときは、相続人が受け取って困るような結果が想定されるものに関しては、事前に売却して現金化しておくことが必要な場合もあります。
大切な遺産を、誰にどのように遺すか
鎌田さんのように、相続がきっかけでかえって資産を失ってしまうような事例もあります。また、相続する資産価値よりも負債のほうが大きく、相続するメリットがないようなケースも想定されます。 令和5年司法統計年報3家事編によると、相続放棄の受理件数は28万2,785件にもなり、過去最高の件数となっています。もちろん、それ以外の家族間での話し合いにより相続放棄するようなケースもありますが、相続放棄せずに相続したら負の財産を引き継いでしまうという家族も一定数いるのです。 自分の資産を遺された家族にどう遺したいのか、またどのように資産を配分し、その理由と想いを家族に伝えるのか、こういったことをまだ元気なうちに考える必要があります。 小川 洋平 FP相談ねっと CFP
小川 洋平