坂泰斗&上田麗奈が語る『俺だけレベルアップな件』の役作り 「努力のレベルアップを」
原作・原案Chugong、作画DUBU(REDICE STUDIO)、脚色h-goonで韓国D&C MEDIAから発行の小説・漫画作品『俺だけレベルアップな件』(以下、『俺レベ』)。日本でも電子コミックサービスの「ピッコマ」で展開されて大人気の『俺レベ』が、TVアニメとなって2024年1月から3月にかけて放送された。そして2025年1月から、Season2となる『俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-』の放送がスタートする。この作品で主人公の水篠旬を演じている声優の坂泰斗と、ヒロインの向坂雫を演じる上田麗奈に役や作品の魅力を聞いた。 【写真】上田麗奈の新キャラ&新衣装
「人類最弱兵器」水篠旬の成長とともに変化していった演技
――『俺だけレベルアップな件』では、「人類最弱兵器」と呼ばれていた主人公の水篠旬が、どんどん強くなると同時に見た目や雰囲気も変わっていきます。旬を演じる坂泰斗さんはどのように役にアプローチされたのでしょう。 坂泰斗(以下、坂):旬に関していえば、あらかじめ成長に合わせてこういうふうに変化をつけていこうといったプランニングはあまりしていなくて、その場その場で起こる心情の変化だったり立ち位置の変化だったりといったものを、そのまま喋っていたら自然と変わっていたという感じです。 ――上田麗奈さんが演じた向坂雫は、Season1はそれほど出番がありませんでしたが、Season2での登場を想定して役を読み込んでいったのですか? 上田麗奈(以下、上田):雫に関してはもう分からないことが多すぎて、探りながら演じた感じです。Season1の時期は分散収録の環境で、ほかのメンバーのお芝居を聞けない状態だったので、少しフワフワしていたかもしれません。Season2の収録に入ってみんなと喋るようになって、ようやく私自身も「雫ってこういう人なんだな」というのが分かってきた感じです。 ――坂さんは旬を演じる上で難しいところなどありましたか? 坂:『俺レベ』だけでなくほかの作品でも、論理的に考えてこうだろうと思って演じるというよりは、キャラが持っているものをそのまま喋ろうとはしています。ただ、この作品に関しては、オーディションの段階から僕自身、旬が置かれている境遇といったものに痛いくらい共感していたところがあったんです。ひとくくりにすべての声優の方がそうだということではありませんが、声質のように生まれ持ったもので勝負している世界ではあるので、それを旬の立ち位置で考えて、反骨心というか折れない気持ち、ただただ強くなりたいという飢えや乾いている感じに共感して、絶対に演じたいと思いました。 ――旬と声優としての自分が重なった? 坂:旬が考えていることに「その通りだよね」と感じるところもありました。旬の声が変化していくことについては、僕自身も声の幅は持っている方で、それが自分自身の長所だと思ってはいたので、「このオーディションで発揮できなかったら今後発揮できる機会はたぶんない」「ここで役を取れなかったらもうダメかもしれない」と背水の陣の気持ちで臨みました。 ――上田さんは、旬を演じる坂さんの変化をどのように思いましたか? 上田:今のお話を聞いて、ここまでいろんなものを抱えてたのか、と思いました。経験を全部表現に落とし込んでいるようで、隙がない感じがして感動しました。ここでこういう怒りが湧くとか、ここで諦めみたいな気持ちになるのかとか、そこにちぐはぐ感があんまりなかったんです。坂さんの声を聞いて、そういうふうに気持ちって自然と溢れてくるんだなって思わせられて、すごく感動しました。 ――参考になるところもありましたか? 上田:旬の体つきが変わることで声が変わるのも、技術的に調整されているなと感じました。旬が喋ってるときの体勢もそうですし、どのぐらい身体を使っているのか、筋肉量はどれくらいか、背丈はどれだけあるのかとか、そういうものも含めて声の軽さだったり、厚みだったりを変えていくのが細やかでした。本当に、内面も体格も含めて旬の変化を意識されてるなと見るたびに思います。 坂:泣いちゃいます。 ――上田さんは、儚げだったり妖艶だったりといった女性の役が割と多いように思いますが、雫のように強い女性についてどのように向き合っていきましたか? 上田:雫の強さについては、Season1のときは戦闘シーンがあまりなかったので、どう演じようかと考えることは少なかったですが、佇まいなり上司に対してのアプローチの仕方には、やはり強さがあるように思いました。凜と背筋を伸ばして伝えることは伝えるようなところとか。愛想がよかったり人の顔色をうかがって自分の態度を変えたりしない子なんですね。そこは私の性格上にないものなので、難しいと思いながら演じていました。 ――Season2は戦闘でも雫の強さが発揮されます。 上田:肉体的な強さみたいなところが出てきますが、そのあたりは皆さんとも収録できるようになっていたおかげで、呼吸感というか声のバランスというのを測りやすくなっていて、雫の声にも戦闘力の高さとか強さみたいなものを出せたのかなと、そこを測りながらやっていた感じはあります。 坂:Season1は旬にフォーカスが当たっていたので、Season2は雫を含め本当にたくさんの人の強さをようやく感じられるというか、実感できるシリーズになっていると、皆さんと収録していて感じました。 ――期待しています。そんな旬と雫ですが、それぞれのキャラの見てほしいポイントについて、Season2での活躍を中心に聞かせてください。 坂:旬は、スタートからSeason1の終了時点までの間でも、精神的にも肉体的にもすごく大きな変化があって、Season2に向けてさらにレベルアップをしていくところがありました。そうしたレベルアップには、すべて意味があるんです。物語的に旬が進む道はやはり明るくないというか、闇の道といった方向に進んでいきます。そうした成長を、アニメでは作画だったり音楽だったりで見せていただいたところもあります。Season2で旬が新たな力を得て、どのような道をたどっていくのかを観ていただければと思っています。 ――雫はどうでしょう? 上田:旬が結構泥臭いところから始まって、踏ん張って強くなっていく荒々しさみたいなものを出していた中で、雫は第1話の時点から強い人だっていうのが分かる描かれ方をしていました。旬が息も絶え絶えに頑張って踏ん張っていたのに比べて、Season1の冒頭で雫が女性の荷物を取り返すシーンでは、彼女は息が上がってる様子も見せないし、表情が崩れたりもしなかったんです。この人は確実に強くて余裕があって、一目置かれる存在なんだなというのが、雫の推しポイントのひとつかなと思っています。 ――Season2では内面にもより踏み込んでいきます。 上田:Season2から少しずつ彼女の内面といったものも見えてきますね。人間らしい部分というのが垣間見えてきて、神秘性だけではなくとっつきやすい人だというところも出てくるのではないでしょうか。旬と出会ったことで見えてくる心の機微というのもあると思います。 坂:旬にとって雫は、ともすれば絶対に交わらない立場だったり強さがあったりしたと思うんです。そこがSeason2になって少しずつ寄っていくというか、交差する瞬間はあったりするのかな。そこで、雫の今まで見えなかった表情というか、人間らしさが見えてくるのかなと思っています。 ――雫以外にも、ギルドを率いるS級のハンターたちが大勢出てきますが、旬と絡んでくるのでしょうか? 坂:旬は今まで本当に弱すぎて、相手にもされないというか視界にも入らなかった存在でした。力を持つようになっても表に出していこうとはしないで、むしろ隠していこうという人だったんですが、否が応でも世間の人たちから注目を浴びるようになって、その力を利用しようとか、おもねろうとする人も出てきました。ようやく世界が旬を中心に渦巻き始める、旬に注目し始めるといった感じです。そうした中で、たくさん登場してくるキャラクターたちのそれぞれの思惑といったものが動き始める、複雑に絡んでくるのではないでしょうか。 上田:雫もそうですけど、やはり他のキャラクターたちも絡むことで旬の魅力が伝わってくるんです。他のキャラクターたちの環境によって、旬がいまどれだけ異質かとか強いかとか、何を考えているのかといったことを楽しめる気がします。 坂:旬は強くなりたいと思ってるんですけど、自分でこうだと表現できるバロメーターがそれほどないんです。他の人たちがいることによって強さが分かるといった側面もあるのではないでしょうか。 ――『俺レベ』のアニメとしての魅力について聞かせてください。戦闘シーンも凄いですし、音楽も澤野弘之さんでカッコいいといった魅力にあふれたアニメです。 坂:コミック版もそうだったんですが、やはり戦闘描写の説得力が必要になってくる作品だと思うんですよね。強いといっても、戦闘描写によってはそうは見えなかったりしますから。Season1の時点で描いていただいた絵だったり、付けていただいた音楽だったりといったものは、この人は今は弱いんだというところがあり、それからSeason1の中でもこんなに強くなっていくんだというところがみえる描写でした。そうしたところを、非常に説得力のある演出でやっていただいているなと感じます。 ――演じながら自分も盛り上がっていく感じでしょうか? 坂:絵で凄いものを描いてくださっているので、その絵に負けるお芝居をしたらダメだと思うところがありました。役者が演じがいのあるお芝居というものを作っていただいて、音楽を作っていただいて、それらの相乗効果で良いものになったのではと感じています。 ――上田さんはいかがですか? 上田:絵の説得力はやはり圧倒的な魅力だなと思っています。回を重ねるごとに制作陣の熱量が上がっていて、クオリティもどんどんレベルアップしてる感じがして、それが作品の中身とすごくマッチしています。第12話まであるSeason1のうちでも、スケールが大きくなっていくのと共に絵作りが繊細になって、情報量もすごいことになっていきました。アクションシーンも含めて、作っている方々の統一された意識というか、ここが大事ということが分かっている感じが頼もしくて、だからいち視聴者としても携わっている身としても、すごく頼もしくて安心して観ていられるんです。音楽もアクションシーンにマッチしてすごく映えるんですよね。 坂:戦闘シーンも、決着がつくところとか、あえて白と赤の線がぐちゃぐちゃになるような描写にしてあって、アニメーションだからできることを、毎回の戦闘シーンでふんだんにやっていただいている、限界に挑戦していただいているとすごく感じました。 上田:あとは目力ですね。旬がたびたび「影の君主」の目をするじゃないですか。しっかりと考えられているんだろうなということをすごく感じます。ここに意味が絶対にある。同じような描き方がされている。そうしたことから考察がはかどるんです。あとは、坂さんのお芝居が、この作品の魅力を底上げしていて、その役とのマッチ率が高いんです。深く考えずに演じているとおっしゃってましたが、己の経験と重ね合わせてリアルにその心の機微を描いているから、ここまでのめり込んで観られるんだろうなって。そこにも魅力を感じました。