【法律相談】息子が“デート商法”に引っかかって50万円の宝石を購入させられた…返品はできるのか? 弁護士の回答
昨今ではマッチングアプリがきっかけで出会うカップルは多いが、それを悪用する人もいる。相手の好感を利用して物を売りつけたり、買わせたりする、いわゆる「デート商法」に遭った場合、返品は可能なのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】 息子がマッチングアプリで知り合った女性と頻繁にやり取りをするようになりました。その女性は宝石店の店員で、2回目のデートで店に連れて行かれ、宝石をすすめられました。息子は購入を断りましたが、「結婚するときに身につけたい」などとしつこく勧誘され、結局50万円の宝石を買わされました。明らかにデート商法だと思うのですが、返品することはできないのでしょうか。 【回答】 息子さんは女性の勤める宝石店から宝石を購入しています。宝石の買い取りは事業者と消費者の取引になるので、消費者契約法が適用されます。同法は、事業者が勧誘に当たり、消費者を困惑させ、困惑に乗じて取引させる困惑類型の商法を10種類定め、これらの商法により契約された取引を取り消せるとしています。 その中には、大きな社会問題になった霊感商法のほか、「経験の不足による好意の感情の誤信に乗じた破綻の告知」があります。これは、社会生活上の経験が乏しい消費者が取引の勧誘をする人に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、その人からも自分に対して同様の感情を抱いてもらっていると誤解している場合に生じます。 勧誘者は相手が誤信していることを知りながら、その心情に付け込み、取引しなければ関係が破綻すると告げ、消費者を困惑させて契約させる、いわゆる「デート商法」です。息子さんがこの商法により宝石を買ったのであれば、購入契約を取り消して返品し、その代金の返却を請求できます。
しかし、契約取り消しのためには、息子さんが社会経験に乏しいこと、勧誘した女性に恋愛感情を抱いており、当然相手からも好意を持たれていると思っていたことが前提になります。結婚話も出ていたのですから恋愛感情の点は間違いないことでしょう。 しかし、ご質問からは女性にその気がなかったことはわかりませんし、宝石を買わなければ結婚しないなどと困惑させたというような事情があったのかもわかりません。まずは息子さんの意向や購入経緯の確認が必要だと思います。 もしも宝石購入後、女性の一方的な拒否で結婚話が破綻しているような場合は、デート商法に引っかかった可能性があり、契約の取り消しができます。 現在、マッチングアプリによるさまざまな被害が発生し、消費者相談が増えているといわれています。息子さんに宝石を売った業者に関する被害相談がすでにあるかもしれません。類似の事案があれば、デート商法であったことの有力な裏付けになります。消費生活センター等で相談してください。 【プロフィール】 竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。 ※女性セブン2024年11月7日号