狙いはノーベル平和賞獲得か、「ウクライナ戦争を24時間以内に解決させる」と豪語するトランプの「打算と誤算」
■ 富と地位を獲得し、次は「レジェンド」狙いか 2024年11月5日の米大統領選挙は、民主党現職のバイデン氏と、共和党で前大統領のトランプ氏の一騎打ちでほぼ確定した。ただし“もしトラ”、つまり「もしもトランプ氏が大統領に返り咲いたら」は、多くの人間にとって相変わらず懸念材料だ。 【写真】大統領の名を冠した米空母「ジェラルド・R・フォード」 「アメリカ・ファースト」「MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン=アメリカを再び偉大な国に)」を叫び、国際問題をあまり気にせず、「内向き志向」を鮮明にするトランプ氏の動向は、やはり気になる。 特に、アメリカが盟主のNATO(北大西洋条約機構)に対して手厳しく、「対GDP比2%の防衛費を負担しない加盟国を守る義務はアメリカにない」「(ロシアなど)侵略者が好き勝手しても、それをむしろ促す」と恫喝まがいの発言を繰り返し、「NATO脱退」まで示唆する始末だ。 アメリカ外交に詳しいある国際ジャーナリストは、「ロシアのプーチン大統領が小躍りしそうな発言ばかり。トランプは一体どちらの味方なのか」と戸惑う。だが、「こうしたトランプ氏の振る舞いには、どうやら裏の狙いがあるのではないかとの噂もある。富と地位を手にした人間が次に欲しがるのは『名誉』の獲得。できれば『レジェンド(伝説)』になりたいと願っているのでは?」と読む。 不動産取引で財をなし、ゴルフ場など多数の物件からなる「トランプ帝国」を築いただけに、富は十二分に持つ。直近の2024年3月下旬には、長年懸案だった同氏のSNS関連企業「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ」の合併手続きが終了し、書類上は数十億ドルが懐に転がり込む計算だ。 この結果、彼の総資産は65億ドル超(約1兆円)に達し、世界の大富豪500傑の仲間入りを果たしたと欧米メディアも報じている。
■ 米大統領経験者で5人目の「ノーベル平和賞」獲得に熱視線 トランプ氏は、当初、泡沫候補と言われながら米大統領選で勝利し、第45代大統領として2017~2021年の間アメリカの頂点に君臨。地位や一定の名誉も手に入れた。そこでトランプ氏は、次に伝説を伴う「名声」を得たいのではないかと目されているわけだ。 具体的には、「ノーベル平和賞と空母『ドナルド・トランプ』の実現」と、前出の国際ジャーナリストは推測する。 まず「ノーベル平和賞」だが、トランプ氏は過去に受賞まで「あと一歩」のところで逃したことがある。大統領在任中の2020年、イスラエルとアラブ陣営の有力国・UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーンの“敵同士”を仲立ちし、両国は外交関係を樹立した。この功績でこの年の『平和賞』候補にノミネートされた。 残念ながら結果は「落選」で、イランで収監中の女性人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏が栄冠に輝いた。トランプ氏はかなり悔しがったようだが、それでも「ノーベル賞を受賞した米大統領経験者は過去4人しかおらず、トランプ氏は5人目を本気で狙っているフシがある」(前出の国際ジャーナリスト)と、「平和賞」獲得への熱量は相当なものらしい。 ちなみに、過去4人の米大統領経験者と受賞理由は以下の通りだ。 【セアドア・ルーズベルト(1906年受賞)】 ポーツマス条約をお膳立てし、日露戦争終結に貢献 【ウィルソン(1919年受賞)】 国際連盟創設を主導 【カーター(2002年受賞)】 イスラエル・パレスチナ和平交渉に尽力、人道支援活動 【オバマ(2009年受賞)】 核兵器不拡散・廃絶への取り組み、気候変動、パレスチナ和平への貢献 錚々たる顔ぶれだが、トランプ氏が所属する共和党の出身者は、受賞第1号のセオドア・ルーズベルトだけで、他の3名は全員民主党という点も興味深い。そこで、トランプ氏の性格から「共和党が1人だけとは情けない。俺が2人目になってやる」と、俄然やる気になるのではないかと見る向きもある。 ある国際シンクタンクの関係者は、「トランプ氏はルーズベルトのようにウクライナ戦争の停戦交渉を仲介すれば、『平和賞』獲得は間違いなしと考えている可能性もある」と強調し、続けてこう解説する。 「ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領を同じテーブルにつかせ、停戦案に署名・調印させ、世界中のマスコミが集まる会場の壇上で、自分が中央に位置して3者が固く握手を交わす──という光景を思い描いていてもおかしくはない」 さらには、「平和賞」受賞の米大統領経験者の中で、カーター以外は全員在任中に授与されているため、「現役が有利」とトランプ氏が計算に入れている可能性も捨て切れない。