新造船から撤退の住重マリン、洋上風力発電事業にシフトで再起図る
手持ち工事高水準/新造船市場、環境が一変 新燃料船ブーム到来
リーマン・ショック以降の韓国、中国造船所との競争激化、新型コロナウイルス感染拡大による商談の停滞、鋼材・資機材高、海運市況低迷など、新造船市場を取り巻く環境は近年目まぐるしく変化してきた。20年10月にはおよそ2年が安全圏内とされる日本の輸出船手持ち工事量が1年を切るほどに落ち込み、複数の造船所が赤字受注に走るか、商船事業から撤退するかを迫られた。 三菱重工業は国内最大級の長崎造船所香焼工場(長崎市)の新造船エリアを大島造船所(長崎県西海市)に譲渡。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は舞鶴事業所(京都府舞鶴市)での商船建造から撤退した。三井E&Sも新造船事業から手を引いた。 一方、ロシアによるウクライナ侵攻などにより国際エネルギー事情やサプライチェーン(供給網)が変化。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の潮流も強まり、液化天然ガス(LNG)やアンモニア、メタノール、水素など新燃料への切り替えブームが到来。30年代早々には1億総トンを超え、「その後も新造船需要は高原状態が継続する」(日本造船工業会)との見立てがある。 日本船舶輸出組合によると、3月末時点の輸出船の手持ち工事量は2762万総トンで、日本の造船所は3年分を超える高水準を確保している計算。鋼材高は厳しいが、為替の円安という追い風もある。余力が生まれたこの好機を生かし、投資を十分に行い、ゼロエミッション船の開発やスマートファクトリー化、新事業へのシフトなどを進めることで造船所の価値が一層高まる見込みだ。