天気図から「快晴」「ひょう」消えた…人の目で判断→自動観測に
東京・大阪では継続「教育的側面大きい」
全国の天気図から、東京と大阪以外では「快晴」や「ひょう」などの表示が今春までに消えたことにお気づきだろうか。気象庁の発表方法が変更になったためだが、その背景には観測の自動化がある。ただ天気予報の最後の決め手や、季節の移り変わりを知る手段には、従来の「人の目」が重要であることに変わりはない。(冬木晶) 【画像】気象庁
1、2時間おきに屋上で
4月中旬、大阪管区気象台が入る大阪市中央区の合同庁舎屋上で、観測当番の職員が空を見上げた。「生駒山の鉄塔が見えるので視程は15キロ。上層に巻雲(けんうん)(すじ雲)があり、この時間帯は『 薄曇うすぐもり 』です」。「目視観測」と呼ばれる業務で、豪雨や大雪でも毎日1、2時間おきに計15回行う。
視程とは「見通しのきく距離」のこと。天気の良い日は45キロ先の明石海峡大橋まで見渡せる。雲の量や形なども記録し、うち7回を報告する。雲の割合が1割以下であれば「快晴」、9割以上を占めれば「曇」か上層雲主体の「薄曇」となり、2~8割であれば「晴(はれ)」と発表される。
「虹」「黄砂」など31項目削減
目視観測はレーダー技術のなかった明治以来、全国各地の気象台や測候所で行われ、空の変化が把握できる唯一の手段だった。「快晴」「曇」などの天気や雲の量・形、「ひょう」「黄砂」「虹」などの大気現象を含めた約40項目を職員の目で判別してきた。
一方、1950年代に導入された気象レーダーや、78年から運用が始まった気象衛星「ひまわり」を使った観測技術も発展。気象庁はこれらの技術を活用し、機械による自動観測に切り替えてきた。
近畿、中四国では2001年、多度津(香川)、宿毛(高知)の2測候所で初めて自動観測が導入され、20年2月には京都や鳥取、高知など11府県の地方気象台でも機械化。今年3月下旬には広島と高松の気象台も自動観測に移行した。
目視観測を続けるのは、全国でも大阪と東京の両管区気象台のみとなった。
自動観測には、空気中の水の粒などから見通しを調べる視程計やレーダーのデータが用いられ、判別項目は「晴」「曇」「雨」「雪」「みぞれ」「霧」「もや」「煙霧」「雷」の九つに絞られる。大きく数を減らしたのは、機械では微妙な判別が難しいためという。