引退も覚悟した西武・岡田雅利が左膝の大手術から実戦復帰「『おかえり』は、まだ言わないでください」
「加藤先生も、『ここまできたのは、奇跡やな』って言ってて」 そう言いながら、岡田はユニフォームのズボンの裾を膝上までまくし上げ、両足の違いを見せてくれた。 手術した左膝にはサポーターが巻かれていたが、右足に比べ、足が真っすぐになっていることははっきりと分かった。 「30何年も、こうやってO脚で過ごしてきて、その膝を(手術で)内側に入れたんやから、そりゃあ、かばって別の箇所に痛みが出たりもしますよね。そういうところは、これからトレーニングをしっかりやって補っていかないといけないなと思います。それでも、両膝がつくんですよ! ほんまにすごいですよ。今の(医療)技術は」 患部に関しては、今ではまったく痛みも心配もないという。だからこそ、「最終的な目標は、一軍の試合に出て、『手術しても治るんや。できるんや』ということを、執刀してくれた加藤先生や大川トレーナーにも証明したいんです」
はっきりと未来をイメージ
今年は、高知・春野での春季キャンプもしっかりとメニューをこなし、一歩一歩、着実に完全復帰へのステップを踏んでいる。その中で迎えた実戦復帰は、プロとして、「すごく気持ち的にも楽になりました」。同時に、また新たな活力をもたらしてくれた。 「次の試合ではしっかりと打席に立って、3イニング、4イニングをしっかり守って、そこから、ピッチャーに『岡田さんやったら投げやすい』とか、そういうふうに思ってもらえるように頑張っていきたいなと思います」 フルパワーを“10”とすれば、現時点での状態は「“6”ぐらい」だという。「次は7、8に上げて、まずは二軍選手にならないと。そこは特例とかそういうのを抜きに、自分も若い子と必死にやって、勝ち取っていかなあかんなと思っています」 これまで、自分が再びプロ野球選手として試合に出られるとは、想像もできなかった。でも今は、はっきりと未来をイメージできている。 「一軍の舞台に戻って、『キャッチャー・岡田』というコールと、自分の登場曲(『それが大事』大事MANブラザーズバンド)をファンのみんなに歌ってもらえたら最高ですね。そこへ向けた一歩を、今日、ようやく進めました」 「だから」と、岡田は続けた。 「その日まで、『おかえり』は言わないでください」 そう言って会話を締めくくった背番号『2』の笑顔は、最高に明るく輝いていた。 文&写真=上岡真里江
週刊ベースボール