山﨑賢人「シリアスな戦闘からの急なコメディ展開に戸惑ったけど、演じ分けるのがおもしろかった」──『連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』インタビュー
人気漫画の実写『ゴールデンカムイ』が連続ドラマになって帰ってくる。2024年1月に劇場公開され210万人の動員を記録した実写映画が今度は連続ドラマとなり、10月6日から放送される。映画に続き主人公・杉元を演じた山﨑賢人に、その役どころを尋ねた。 【写真を見る】『連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』で主人公の杉元を演じた山﨑賢人の撮り下ろし写真をチェックする
存分に『ゴールデンカムイ』の世界を味わえる全9話のドラマ
野田サトルによる累計発行部数2900万部超のヒット漫画「ゴールデンカムイ」をまさかの実写映画化し、その熱量の高さと圧倒的な再現度で人気を博した実写映画の続きが、今度は連続ドラマで描かれる。WOWOWによる『連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』が10月6日から放送開始。先だって公開された予告編には、ますます気合の入った映像が収められており、日に日にファンの熱量が高まっている。主人公・杉元を続投する山﨑賢人に、舞台裏をインタビュー。そこからにじみ出てきたのは「撮影終わりに筋トレをして気分転換」するという、只者ではない役者魂だった──。 ■剣から銃剣へ、戦闘シーンの難しさ ──映画版の際、久保茂昭監督からお手製の資料が配られたそうですね。 「杉元図鑑」のような、彼の生い立ちが細かく書かれていました。漫画の中だと、エピソードの中で不意に回想が出てきますよね。そういったものを時系列にまとめて下さっていたり、戦うシーンにおいての杉元は大きく括ると3つのパターンに分けられるのでは、というような分析もありました。一つ目は、殺戮マシンのように冷静に敵を仕留めていくパターン。映画でいうと尾形(眞栄田郷敦)と戦っているときがそれにあたります。そして2つ目は、二〇三高地のように鬼神のごとく闘っている姿。最後の3つ目は、アシㇼパさんが捕まったときなどにブチギレて見境がなくなるような激情モードです。その他にも、杉元の傷はこういう感じがいい等々、本当にきめ細かく、かつ膨大な資料でした。杉元を演じるうえでなくてはならない大切なものでした。 ──山﨑さんは以前、『キングダム』の戦闘は剣がメインだったのに対して『ゴールデンカムイ』は銃剣と素手のため間合いを取るのが難しかった、とお話しされていました。杉元のトレードマークの一つである帽子をかぶるアクションに関してはいかがでしたか? 視界が遮られることはなかったように思います。ただ、杉元がダメージを受けたときにキッと睨むシーンで、自分は目が見えるようにやっているつもりでもカメラで映すと隠れてしまっていて調整を行う、といったことはありました。ただ、目が見えないのが逆にカッコいいね、と採用された部分もあります。 ■シリアスからコメディまで瞬時に切り替える力 ──ドラマ版において、アクション面でチャレンジングだった部分はどこでしょう。 やはり辺見(萩原聖人)との戦いでしょうか。『ゴールデンカムイ』らしい緩急があり、シリアスに戦っているところと辺見の変態さが光る部分のギャップ、「きらめこうぜ!」といったようなセリフが組み合わさったときの面白さを感じながら、それでいて銃剣を躊躇なく刺すところなど様々な要素が詰まったアクションをどう見せるかは考えたところです。やりがいがありましたし、すごく楽しかったです。 ──今回は久保監督も含めた複数監督制でしたが、映画版との違いはありましたか? 久保さんの想いを引き継いだうえで皆さん監督をされているとは思いますが、それぞれに撮影の進め方や演出のアプローチは全く違いました。僕個人は、それも先ほどお話しした『ゴールデンカムイ』の様々な要素がまじりあっている面白さにつながっていると感じています。辺見も世界ホテルも、そのエピソードにしか出てきませんし、本当に各話でカラーがガラッと変わります。でも全監督に共通しているのは、『ゴールデンカムイ』への愛。皆さん熱量が高くて、最高でした。 例えば、牛山(勝矢)と握手する際の“顔圧”を落合賢監督が「もっといける! もっといける!」と言ってテイクを重ねたり、踊るように戦うシーンをどう表現するかにこだわっていました。家永(桜井ユキ)と対峙したとき、見たことのない杉元の感情を引き出そうとしてくださったことも印象に残っています。杉元の「てめえ何でアシㇼパさんの目ん玉舐めてんだ?」と詰め寄るシーンも自分で言いながら「すごいセリフだな……」と感じました。 そして、二階堂(栁俊太郎)の変貌ぶりを自分はドラマで初めて観て、最高に笑いました。皆さん濃いキャラクターを演じられていて、お互いに「そこに反応してくるんだ」と思いながら掛け合いをしてくのは楽しかったのではないかと思います。 ■長期間の撮影を乗り切る秘訣 ──映画版で、山﨑さんは「杉元の狂気性が根底に流れるようにしていた」とおっしゃっていましたが、その続きであるドラマ版の第1話では逃げる鹿に自分を重ねて仕留めるのを躊躇してしまうなど、“揺らぎ”も描かれますね。 幾多の戦場をくぐり抜けてきた杉元でも、経験していないものには弱いのだと思います。例えばクマと対峙したときに最初はビビってしまうのも理解できましたし、いまお話しいただいた鹿のシーンでいうと、きっとそこに杉元が本来持っている優しさが出たのだろうと感じて、逆にリアルだなと思いました。基本的に杉元を演じていて心情面などで「わからない」ということはないのですが、「どう表現しようか」と悩むことはありました。例えば真面目な話をしているのに急に「あらかわいい」みたいなコメディ要素が入ってくると、この塩梅はどうしたらいいのか……と悩みました。でも、そうした難しさも楽しいんです。 ──その目まぐるしさが『ゴールデンカムイ』らしさではありますが、生身でやるとなるとなかなか難しいですよね。 その通りにやったとしても、なかなかうまくつながらないんです。ただこういう芝居を求められることも他の作品ではないので面白かったし、挑みがいがありました。 ──撮影期間は約8カ月と伺いましたが、それだけの長期間を乗り切るため、どのような体調管理を行っていたのでしょう。 寒い場所での撮影も多かったので、風邪を引かないようにしようと思って、基本的なことなのですがちゃんとお風呂に入ったり温かいものを飲んだり、栄養をきちんと取ることを意識していました。ご飯がとてもおいしかったのでそれを楽しみにモチベーションを保っていた部分はありましたし、あとは筋トレをすることで逆に気合を入れていました。 ──撮影であそこまで動いているのに、さらに運動をされるのですね! 撮影って、激しく動く時間と全然動かずじっと待つ時間の両方があって、知らず知らず身体にストレスが溜まってしまうんです。そこで撮影終わりにジムで体を動かして発散することで、自分の中のバランスを整えていました。 ──とはいえ、その待ち時間に次のシーンの殺陣を覚えることもあるかと思います。素人考えだと、休みたいと思ったりはしないのかと考えてしまうのですが……。 やると決めてしまった以上、それ以外ないですから(笑)。もちろん眠いときはありますし、休みたいなという気持ちが生まれる瞬間もありますが、「じゃあ一回お風呂に入ってから行くか」と切り替えたり、或いは「眠いー!」と言いながらジムで身体を動かしていました。何時でもお風呂に入れたりご飯を食べれたりする環境ではあったので、あまり根を詰めすぎずにしていたかもしれません。 ──『ゴールデンカムイ』『キングダム』という2大シリーズに『アンダーニンジャ』(2025年1月24日公開)も加わり、大忙しかと思いますが、インプット等はどのように行っているのでしょう。 やはり映画ですが、なかなか観られないので気になるものをアプリや配信サービスのウォッチリストに入れています。僕は“ながら見”ができないので、どんどん溜まってしまうのが悩みではあります。最近ようやく、SF映画『コンタクト』(97)を観ました。 ──『コンタクト』! 随分懐かしい映画ですね。山﨑さんのお忙しさがうかがい知れます。 ずっと観たくて、念願でした。待った甲斐があって、面白かったです。 ベスト¥256,300、Tシャツ¥26,400 by OUR LEGACY(エドストローム オフィス Tel.03-6427-5901) 『連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』 10月6日(日)からWOWOWにて独占放送・配信 毎週日曜午後10時放送・配信(全9話) 製作著作: WOWOW ©野田サトル/集英社 ©2024 WOWOW 写真・山田陽、取材と文・SYO、編集・遠藤加奈(GQ) スタイリング・伊藤省吾(sitor)、ヘアメイク・髙橋幸一(Nestation)