ドイツ留学を夢見た大学生の娘、飲酒運転の犠牲に…九州大「留学生村」に命の大切さ伝えるモニュメント
飲酒運転の車が起こした事故で娘を亡くした福岡県糸島市の大庭茂弥さん(77)が、命の大切さを伝えたいと願いを込めたモニュメントが完成し、22日に娘の故郷でもある同市でお披露目された。毎年、自ら植えたヒマワリが大輪の花を咲かせる一帯は、九州大の留学生らの交流拠点にもなっており、大庭さんは「国を超えたシンボルになってほしい」と願う。(岡林嵩介) 【写真】大庭三弥子さん(1999年撮影)=遺族提供
故郷の糸島市に
この日午前、県警の岩下剛本部長らも出席して糸島市泊の県道交差点で除幕されたのは、芝生の丘の台座に腰かけながら何かを訴えるように右手を差し出す女性の銅像だ。そばの碑には「君たちを忘れない。亡くなった方の生きた証に触れ、命の大切さを感じ、思いをつなぐことで飲酒運転がゼロになる日が必ずやって来る」というメッセージも刻まれている。
モデルとなったのは、同市出身で鳥取大3年(当時)だった大庭さんの次女、三弥子さんだ。1999年12月に鳥取県で車を運転中、対向してきた飲酒運転の車に衝突され、同乗していた友人2人とともに命を落とした。21歳だった。
三弥子さんは「自然を生かした公園設計をやりたい」と夢を抱き、ドイツ留学も計画していた。亡くなった約2か月後、悲しみに暮れる大庭さんの元に、未来への一歩として三弥子さんが受けていた色彩の検定試験の合格通知が届いた。
「娘の死を無駄にしないため、遺族が語らないといけない」と決意した大庭さんは、福岡、鳥取両県の学校などで飲酒運転の危険性や命の重さを伝える講演を始めた。500回を超える活動の中で、同様に飲酒運転による事故で高校生の長男を失った福岡市東区の山本美也子さん(55)とも出会い、2015年からは妻の由美子さん(72)らとともに、三弥子さんたちのためにヒマワリを植えてきた。
支援の輪広がる
大庭さんの思いを知った人々の間でも支援の輪が広がった。近くの九州大伊都キャンパスの南側で、留学生の居住エリアを整備する「国際村構想」が浮上したのを機に、外国人ら向けのホテル建設に携わる不動産賃貸業「セトル」(福岡県直方市)の一尾泰嗣社長(74)と妻の弘子副社長(67)は、「加害者を憎んでも解決しない。失われた命に恥じないよう生きる」と話す大庭さんに感銘を受けた。