阪神・西が究極投球術で完封移籍初勝利。“あのジンクス”を打ち破れるのか?
阪神の西勇輝(28)が7日、マツダスタジアムで行われた広島戦に先発、140球を投げ6安打9奪三振の完封で移籍初勝利を挙げた。12球団一番乗りとなった西の完封勝利は、2017年4月9日の日本ハム戦以来、約2年ぶりで通算7度目となる。ホームベースの両サイドを丹念に攻める究極の制球力で広島打線を手玉に取った。オリックスから阪神にFA移籍した投手は西が3人目。一軍登板のなかった山沖之彦氏、通算8勝で終わった星野伸之氏と“オリックスから阪神に移籍してきた投手は失敗する”というジンクスがあったが、パ・リーグで磨かれた西の投球術はセ・リーグでも通用することを証明した。悪しきジンクスを破りそうな好スタートだ。
西ワールド全開
最大のピンチは初回にあった。 先頭の田中にデッドボールをぶつけ、菊池には初球のスライダーを打たれ三遊間を破られた。わずか4球で無死一、二塁のピンチを迎えたのである。ここまで打率.433と好調の3番・野間に対して外角低めのゾーンにボールを集めた。カーブでショートゴロに打ち取る。続く鈴木誠也との勝負は避けて一死満塁と塁が埋まったが、西は落ち着いていた。昨日のゲームで目覚めた松山を外角へ逃げるように曲がるチェンジアップで誘った。引っ掛けた一塁ゴロ。 この日は、前日一塁でタイムリーエラーをした中谷がセンターへ回り、一塁は守備に定評のあるナバーロだった。ナバーロから鳥谷へ。その鳥谷からの転送を軽快に一塁カバーに入った西が体を伸ばしてキャッチ。ゲッツーを成立させ無失点に切り抜けた。 「あそこが一番辛かった。守備のリズムでゲッツーを取れて良かった」 狙って取ったのである。 2回からはもう“西ワールド全開”である。 「あまり(広島は)僕のスタイルがわかっていないと思うので自分らしくいけばなんとかなる」 一塁側のプレートの端を踏み体を開き打者に正対するような姿勢からホームベースを左右に大きく投げ分けてボールを動かす。バッターからはボールのリリースは見やすくタイミングは取りやすいはず。だが、その一種独特の投球フォームからの特異な球筋があり他投手とは違う角度のズレが生じてバットの芯を外されるという現象が起きる。しかも、そのコントロールはストライクゾーンを9分割ではなく16分割して投げ分けるほど精密なものだ。 そして重要なのがテンポ。 「うなずけるタイミングでミットを構えてくれた」 試合後、西は梅野のインサイドワークに感謝した。 スライダー、シュート、チェンジアップという落ち方が微妙に違う3つの変化球を精密なコントロールで同じようなコースに同じようなテンポで投じてくるので打者には厄介なのだ。 裏をかく配球術も絶妙だった。。 4回一死二塁のピンチでも安部に大きなカーブを2つ見せておいて、最後は外へのスライダーで見逃しの三振。この試合、西はわずか9%しかカーブを投じていないが、安部には2球も使った。幻惑されたのだ。続く曾澤には、一転、カウント1-1からストレートを続けた。最後はズバっとインサイドへストレート。會澤も裏をかかれた。 8戦で5発12打点と絶好調だった“2冠”の4番打者、鈴木誠也への配球も頭を使ったものだった。4回には初球に内側のスライダーを見せておいて最後はインサイドのストレートをウイニングショットに選びライトフライ。このたった1球だけ投じた内側のボールが、その後の打席に効力を発揮することになる。第3打席、第4打席は徹底したアウトコースへの変化球攻め。外にスライダー、チェンジアップ、カーブで小さな緩急をつけられた鈴木は続けてセンターフライに打ち取られた。4番の沈黙はイコールカープ打線の沈黙だった。