豪雨による洪水から容赦ない山火事まで、米カリフォルニア州が災害の中心地となる理由
(CNN) 米カリフォルニア州南部が水に沈んでから、まだ1年も経過していない。細長い水蒸気帯を意味する「大気の川」から大量の雨が降り出したのが一昨年の12月。その後も豪雨は勢いを増し、昨年2月初めにはロサンゼルスの雨量が300ミリ近くに達した。冬を通じての荒天で冠水した道路には車が浮かび、数百件の土砂崩れが発生した。 【画像】ほぼ焼失した高級住宅地パシフィック・パリセーズを捉えた衛星画像 現在、気候の振り子は別方向に振れている。 現地での記録上最も暑い部類に入る夏が過ぎた後、カリフォルニア州南部一帯を干魃(かんばつ)が襲った。雨期が始まった時点で、現地の湿度はこれまでで最も低い水準にあった。そうした中、昨冬の豪雨の中で育った植物が発火点となり大規模な山火事が発生。10年に一度レベルの強風も重なり、火災の範囲はロサンゼルス周辺地域へ拡大した。 カリフォルニア州は、人間由来の気候変動がもたらす最悪の事態の影響を特に受けやすい地域となっている。地中海性気候に属し、元来気象条件は両極端に振れる傾向にある。つまり夏には雨が降らず、降雨量の大半は冬に集中する。その結果、わずかに気候パターンが変動しただけでもその影響は甚大なものとなり、州内は猛烈な豪雨や灼熱(しゃくねつ)の干魃に見舞われる。 乾燥と雨天とが激しく入れ替わるこうした現象は、「天候のむち打ち症」の名で知られ、9日刊行の科学誌ネイチャーに掲載された論文によれば、化石燃料由来の地球温暖化に伴ってその頻度は一段と増している。こうした変動を受けて、山火事や洪水といった災害の被害もより深刻なものになるという。 昨冬発生した豪雨でカリフォルニア州の植物は急成長を遂げた。地域の植生の規模は平均の2倍に達していたと、カリフォルニア大学の気候科学者、ダニエル・スウェイン氏は推計する。 これらの植物が、今週発生した山火事の燃料となった。 大量の草や茂みが極度に乾燥した環境下に置かれることで発生した山火事は、やはり通常の水準を上回る強風でその勢いを増す。ただでさえ大規模な火災が風速44メートルの風に乗って家から家へと燃え移る状況では、駆けつけた消防士にも打つ手がない。 冬季の雨の到来に時間がかかれば、その分だけカリフォルニア州とその地中海性気候が極端な火災の動向に左右される期間も長くなる。 従来カリフォルニア州の山火事シーズンのピークは10月だったが、直近のロサンゼルスの山火事が示したように、温暖化した世界においてはもはや山火事シーズンは存在しない。 同州のニューサム知事も7日、今や一年中が山火事シーズンだとの見解を示唆した。 全米省庁合同火災センターの予報官らは、今後も1月を通じて通常を上回る大規模火災のリスクが存在し続けると警告。標高の高い地域においては従来の山火事シーズンの到来が早まる可能性があるとも予測した。 極端な気候の振り子が湿潤の方へ戻り、冬の雨でカリフォルニア州がずぶ濡れになるまでは、引き続き激しい山火事が複数回にわたって発生しかねない。気候変動により、それらがいつ発生するかを予測することは一段と困難になっている。