公的年金“不公平”議論どうなる?「第3号被保険者」制度の廃止をめぐり賛否が真っ二つ
《庶民の主婦層は働けということか!》《専業主婦の妻がいたから頑張ってこられた。仕事もやってこられた。子育ても感謝している》《保険料を納めていないのだから廃止は当然》……。ネット上はまさに激しく賛否両論が飛び交う事態となっている。 【写真】予測ズレまくる「財政検証」の不可解…年金は減る一方「20年前は夫婦で49.1万円⇒最新試算21.4万円」 経済同友会が2日、専業主婦など扶養される配偶者が対象となる「第3号被保険者」制度の廃止などを求める提言をまとめた、と報じられたためだ。 新浪剛史代表幹事(65)は会見で、「まず3号を廃止しようということ。経団連などとも足並みをそろえて方法論を議論したい」と発言。与野党の政策責任者や関係省庁へ働き掛けを行う考えを示した。 少子高齢化で将来不安が高まるばかりの公的年金制度。現在、国民年金は原則20歳から加入し、60歳までの保険料納付が義務付けられている。学生や自営業者などは「第1号被保険者」、厚生年金などを負担する会社員や公務員は「第2号被保険者」として分類。そして「第2号被保険者」に扶養されている配偶者で年収130万円に満たない人(専業主婦(夫)やパート・アルバイトなど)が「第3号被保険者」だ。 「厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、「第3号被保険者」は約793万人で、内訳は男性が約12万人、女性が約781万人。保険料は「第2号被保険者」が全体で負担しているため個別に納める必要はない。 父親が働き、母親が家事や子育てをするのが当然とされた時代に設計した制度だが、厚労省の社会保障審議会年金部会の資料によると、専業主婦(夫)の世帯数は1985年の約936万世帯から2022年は約430万世帯に減少。他方、共働き世帯数は約718万世帯から約1191万世帯に増加。社会構造の変化に伴って近年は「第3号被保険者」の保険料負担を巡って「不公平」との声も増加している。 ■家事や子育て、親の介護などの諸事情があり、働きたくても働けない人がいる こうした背景から経済同友会や日本商工会議所などは「第3号被保険者」の制度廃止を訴えているわけだが、廃止については慎重論も少なくない。「第3号被保険者」に分類された人の中には家事や子育て、親の介護などの諸事情があり、働きたくても働けない人がいるからだ。 SNS上で《廃止されたら金持ち夫婦しか専業になれない》《第3号の制度があるから夫婦の役割分担ができている》《廃止されたらPTAは誰がやるの?塾の送り迎えは?いろんな場面で社会が回らなくなると思うけど》といった反対の声が上がるのもこのためだ。 「第3号被保険者」の保険料負担に対する「不公平」との声についても、衆院調査局調査員はリポートでこう指摘している。 「厚生年金では、加入期間が同じ場合、世帯1人当たり賃金水準が同じであれば、どのような世帯構造であっても世帯1人当たりで見た金額や所得代替率は同じになり、世帯類型による違いは生じない」「厚生年金に加入する被用者世帯においては、片働き世帯か共働き世帯かによらず、夫婦の合計賃金が同じであれば、同じ合計年金額であり、『負担と給付の関係』をめぐる公平性は保たれていると見ることができる」(国民年金第3号被保険者制度についての一考察より) そして、少なくないのが《第3号が廃止されたら未婚率も上がる》といった投稿だ。 年金部会の資料によると、「第3号被保険者に新たに保険料負担を求める場合、免除や未納となり将来低年金となる可能性がある」との見方もあり、将来不安などから結婚、出産に二の足を踏むのではないか――というわけだ。 「第3号被保険者制度」の廃止議論は今後、どう進むのか。 ◇ ◇ ◇ 「100年安心」はとっくに崩壊した公的年金制度。●関連記事【もっと読む】で《小泉進次郎氏「死ぬまで働け」戦慄の年金プラン “標準モデル”は萩本欽一…なんでそうなるの?》、【さらに読む】で《年金財源24兆円が1カ月余りで溶けて消えた…ブラックマンデー超えと世界同時株安が直撃!》を取り上げている。