TOWAが生成AIなど高性能半導体向けで独走、急がれる次世代機
(ブルームバーグ): 半導体製造の樹脂封止工程に使われる装置で独自技術を持つTOWAが、生成AI(人工知能)ブームの追い風を受けて業界内で地歩を固めつつある。生産性向上に焦点を当てた次世代機も開発中だ。
岡田博和社長は3月26日のブルームバーグとのインタビューで、コンプレッション(圧縮)方式の装置はAI半導体に使われる広帯域メモリー(HBM)向けで昨年夏ごろから需要が急激に伸び、韓国のSKハイニックスとサムスン電子から前期(24年3月期)だけで22台受注したと述べた。
同社の装置は、ウエハーからチップを切り出し基板に接続した後にチップを樹脂で封止するという、後工程の中でも最終段階で使われる。溶かした樹脂を基板の隙間に流し込むトランスファー成形方式に加え、溶融した樹脂に半導体を漬け込むコンプレッション成形方式を販売する。
岡田氏は、「ハイエンド系、特に生成AI向けにおいては、当社の技術でないとできないと言われるぐらい大変高い評価を得ている」と自信を見せる。HBMの本格生産は25年ぐらいからとみており、「ビジネスとしてはこれから」だと話す。
封止装置メーカーには、アピックヤマダ(長野県千曲市)やシンガポールのASMパシフィックテクノロジーなどの競合がいるが、カナダのコンサルティング会社テックインサイツによると、TOWAは金額ベースで22年に66%のシェアを占めた。中でも、技術的に難易度の高いコンプレッション方式でライバルはいない。
いちよし経済研究所の大沢充周アナリストは、過去にTOWA以外にもコンプレッション方式の開発に挑戦したメーカーはいたが、TOWAがコアの特許を抑えたほか、顧客に深く入り込んでおり「まねのしようがないみたいな状況になっている」と分析する。
同社は生産性をさらに上げてコストを半減させる目的で、次世代機の開発にも積極的だ。岡田氏は、量産化は2028年ごろまでかかるとの見通しを示すが、「品質が確立したらいかに安く作るか」という顧客の要望を取りこぼさぬようにしたいと話す。