住宅耐震化の現状と目標

15日に公示された衆院選は、27日の投開票まで12日間の選挙戦がスタートした。大規模災害から「命」を守る備えに、政治はどう対峙（たいじ）するのか。有権者が一票を託す上で判断材料となる争点をクローズアップする。 【表でみる】夕刊フジが作成した「落選危機にある大物・著名候補21人のリスト」 ■求められる実効性 2万9000棟を超える住宅が全半壊した今年元日の能登半島地震では、多くの人が倒壊した家屋の下敷きになり命を落とした。南海トラフ巨大地震の被害が想定されるエリアでも住宅の耐震化が遅れている地域がある。防災には、それぞれの地域に固有の課題があり、実効性のある対策が求められている。 全国の住宅の耐震化率は平成30年時点で約87％。耐震性が不十分な家屋は約700万戸あるとされ、政府は令和12年までにおおむね解消すると目標を掲げている。 近い将来に高確率で発生すると予測されている首都直下地震では、耐震化率90％で死者数を約5割、100％で約9割減らせるとされている。 津波や台風、大雨などから「命」を守る備えは不可欠だ。石破茂首相は大災害に備えて司令塔となる「防災省」構想を掲げ、政府は8年度中の「防災庁」設置に向けた準備を始めた。危機管理を巡る本気度を見極めたい。 ■「緊急車両が通れない」 狭い路地に木造住宅がびっしりと立ち並ぶ「木密地域」が多い東京都荒川区。とりわけ、荒川6丁目は、都が令和4年に建物倒壊と火災、救助活動の3つの観点からリスクを算出した「地域危険度」で1位となった。 「古い木造の住宅が多く、脇道に入るとどこだかわからなくなるくらい密集している」。この地区で、住民らが交流する施設に勤務する女性職員（71）はこう語り、「施設には何日か分の備蓄はあるが、家屋が潰れるなどしたら高齢者がたどり着けないかもしれない」と防災対策の現状に不安を感じていた。 区内には、町屋や南千住など危険度が30位以内に入った地域が目立つ。荒川6丁目の商店主、加藤慎吾さん（67）によると「緊急車両が通れない道幅の所も多い」。防災の現場には、それぞれの地域の特性がある。国政では「防災省」などマクロな視点での構想が語られるが、「地域で何が必要かに対応できないと意味をなさない。縦割りのシステムの中でそれを吸い上げることができるのか」と具体的な施策に注目した。（山本玲）