「家計簿」やめました!理系夫と編み出した「銀行口座の残高」を指標に、夫婦で共有する家計管理術
お金の話でギスギスしない雰囲気ってどうやってできたの?
さてさて、ここまで読んでいただいた方の中は、こんなふうに思った方もいるかもしれません。「そうは言っても、2人で情報共有するのって難しいんじゃない?」「夫婦でお金のことをじっくり話し合うなんてうちはムリ」と。 そこで、くぼさん夫婦にズバリ、家計管理に対する価値観をすり合わせるコツについてうかがいました。 ―くぼさんは、新婚時、お金の話をすることに抵抗があったそうですが、この記事を読んでいる人の中にも「配偶者とお金の話をしにくい」と感じている人がいると思います。夫婦の価値観をすり合わせていくためにはどうしたらいいと思いますか? くぼ「夫婦っていろいろだと思います。でも、少なくともお金については、“一緒に考えて一緒に人生を歩んで行こう”と一方が歩み寄っていかなければ、考え方はずっと平行線のまま。特に、どちらかが“家計の共有”や、“相手のお金の使い方”に対するマイナスなイメージを持っていると、もめごとになったり、何かを隠したりしやすいように思います。 個人でお金を自由にたくさん使いたい!……そう思っていた人でも、家族ができた場合は、互いに歩み寄って“家族のやり方”を考えていく必要があります」 ―既婚者を対象とした『kufura』のアンケートでは、自分が歩み寄っても、相手が変わってくれないという声も聞かれます。例えば、飲み会費用がかさむとか、浪費をするとか……。 くぼ「相手のお金の使い方に不満がある場合もありますよね。でも、その気持ちは一旦抑えて受け止めるのが肝心。例えば、飲み会なら“仕事を円滑に進めるため”に役立ったりなど、一方的に飲み会はいけないという捉え方はしないで状況を理解することが大切だと思います。ただ好きなだけというのもあるでしょうけど(笑) その上で、現状の家計を共有して、どのくらいだったら飲み会に使っても大丈夫だよねなどのお話をするのもいいかもしれません。また、家の現在の収支を見せて“数年後にこういうことをしたいんだけど、どうやったらお金が工面できると思う?”など、前向きなトーンで「相談」してみるのはどうでしょうか? 単なるYES/NOの答えではなく相手の“意見”を引き出し、頼りにしているという雰囲気を出せれば、不満も少なくうまく行きやすいと思います。 私の両親もそうだったのですが、負の感情をむき出しにして伝えると、相手が身構えてしまい、話し合いが続かなくなってしまいます」 理系夫さん(以下、理系夫)「このくらいなら交際費として使っても大丈夫だよね、という夫婦間の合意があらかじめ取れていることで、むしろお金を気持ちよく使えるようになって、互いのストレスも軽減するのではないでしょうか?」 ―お2人はお金の使い方でけんかになること、ありませんか? くぼ「ないです。お互いの支出を隠すことはないですし、どう使ったかで責めることもありません。“お金のこと、そんなに見せてしまって大丈夫なの?”と心配されることもあるんですけど、むしろ内緒にしているお金があるから疑心暗鬼になるんだと思います」 ―小遣い制を導入して、月ごとに好きなことに使えるお金を決めておこうという家庭が多いと思うのですが、お2人はどうしていますか? くぼ「うちの場合は小遣い制ではなく“必要なものは買おう”という感じです。例えば私は“推し”のイベントやグッズにお金を使っていますが、心のうるおいになって機嫌よくいられるので、メリットは大きいです。私が楽しんでいるのを見て、夫と娘も今では“推し”のファンになりました(笑)」 ―理系夫さんは、「くぼさんが推し活にお金を使うなら、自分も使ってやろう」みたいな気持ちがわいてくることはないですか? 理系夫「ないです、全くないです。でも、僕は僕で音楽が好きで音質にこだわりたいので、良いイヤホンを買ったりといった出費もあります。お互いさま、な部分はありますね」 くぼ「互いの全資産をアプリで見られるので、今月はこのくらいの変動があって、このくらいの値段なら買ってもいいんじゃない?とすぐ言えるのが、夫婦で家計を共有するメリットです」 ―互いにオープンにしていないから「あ、趣味グッズがまた増えてる!貯金が減っちゃう」と不安な気持ちになってしまうのかもしれませんね。 くぼ「“こういう物が欲しくて、このくらいの予備のお金があるから買いたい”と言えば、“まあ、いいか”となるだろうけど、相談なしに突然買ってごまかそうとするから疑心暗鬼になるのかも……」 ―おっしゃる通りだと思います。ただ、そうは言っても「こまめに相談したり、話し合うのが面倒」と感じる人もいそうです。 くぼ「私たちも基本的に面倒くさがりです」 理系夫「うんうん、面倒くさがりだよね」 くぼ「調べたり考えたりするのは面倒でも、お金と楽しくつき合うための工夫を2人で考えることで、“面倒さ”を上回るようなリターンを得られることがわかってきました。だから、基本、お金は楽しい話題の1つ。“これで得した分、ここにお金を使うとこういうこともできそうだよね”とあれこれ情報収集をしています」 理系夫「お金を払った先に、どんなことが待っているかを考えるのが楽しいんです」 くぼ「そうそう。楽しい思い出や“ワクワク”など、“何か”が返ってくるようなお金の使い方を大切にしています。いろんなことを調べるのも、面倒くさいですよね。私はそれを“面倒の壁”と読んでいます」 理系夫「でも、“面倒の壁”を乗り越えた分、“何か”があるんですよね。地域の広報誌やインターネット、雑誌などを見ながら、お得な情報を集めています」 【これまでに2人で調べて「お得体験」をした事例】 ・コロナ禍の「Go To トラベル」「もっとTokyo」などの旅行キャンペーン。申請を面倒に感じつつも積極的に使ってみたところ、3~8割引きを超え、中には旅行代(1泊2食付)を超える還元も。10回の利用で、総額で約22万円分のお得に。 ・地域の電子マネーチャージで50%還元や、アプリの割引クーポンなどいろいろなキャンペーンを活用。 ・「Go To Eat」では、総額約8万円のポイントを獲得、約50回外食をお得に楽しむ。 ・ふるさと納税の返礼品を厳選。「普段買わないスペシャルなもの」から「普段家で買っているもの」へシフト。無洗米、パックのご飯、炭酸水、アイスコーヒーなどの食費を圧縮している。 ・株主優待券。余剰分の現金を「株に置き換える」ことで、株主優待食事券(利回り約4%)が得られ、それを使って出費ほぼゼロの外食を毎週楽しむ。 くぼ「いつも調べた情報を持ち寄って、今の自分たちの都合に一番合って、コストが見合うものを、話し合って決めています。 旅行先や引っ越し先、子どもの教育プランなどを考えるときも、選択肢を一覧にして、それぞれのメリット・デメリットを考えます。調べるために記録したものを後から見返すのも楽しいんですよ、“こんなお金の使い方したなぁ”って」 理系夫「保存がきくからと選んだふるさと納税の『冷凍南蛮タルタル30食』や『乾麺のきしめん100人分』は、さすがに3人家族では消費がちょっと大変でしたが、それもいい思い出です」 ―お2人の話を聞いていると、情報共有をしながら“支出戦略”をたてることで、結果的に家計の合理化につながっている印象を受けました。 くぼ「例えば、家の整理整頓って、いったん全部物を出して何を持っているか見てみないと、何が必要で何を捨てるべきか見えにくいですよね。家計も同じで家庭のお金をトータルで見られるようにしておかないと、自分たちがどれくらい持っていてどれくらい使えるか、使いどきを見極めることができなくなると思うんです。 やっぱり、お金は使うためにあります。夫婦で家計管理をすることで、家族のためにこの時期にお金を使いたいから、今は出費を減らしておこう……といった、お互いに納得できる、ベストな使い方を考えていきたいです」 ―「次はこんなことにお金を使いたい」という目標はありますか? くぼ「今の夢は、世界一周クルーズに出ること。だから、家の一角にパンフレットを飾っています。けして安い買い物ではありませんが、“このくらいの年齢になったら、気持ちよく旅に出たいね”という目標があることで、家計管理も日常生活も、より一層楽しめているなと思います」 くぼこまきさん夫婦の【節約のくふう】をおさらい 1:「お金の情報」を夫婦間で共有する 2:細かく記録するよりも、「残高の増減」に着目する 3:将来の計画を作って「お金の使いどき」「貯めどき」を見極める 4:「節約」と「時間」をはかりにかけて、「時間」を選ぶこともある 5:調べて節約するのは面倒だけど「面倒の壁」を乗り越えるとリターンが待っている 「家計を考えることは、人生を考えること」と語っていたくぼこまきさん。 お2人が家計を共有することは、お金の“使い時”“貯め時”について考えるだけでなく、“働き方”“暮らし方”も含んだ“生き方”そのものの共有につながっているんですね。 構成・文/北川和子 撮影/小林美菜子