リニューアルでV字回復した「京都市動物園」子ゾウ寄贈秘話
「京都市動物園」(京都市左京区)がリニューアルし、話題を呼んでいる。コンセプトは「近くて楽しい動物園」だ。「近いというのは、都心から近いという意味と、お客様と動物の距離が近い、ということもある。動物の福祉に配慮し、動物も楽しい気持ちになれるような環境づくりをしています。リニューアル後は滞留時間が長くなっています」と、同動物園の学芸員は語る。人止め柵の撤去をした「トラ舎」をはじめ、「サルワールド」のゴリラなども自然に近い形で展示されており、樹上のゴリラを観察できる。さらに「ゾウの森」にはラオスから寄贈された子ゾウが4頭、水浴び姿が目玉の一つになっている。だが、この4頭、確保するのに3年も歳月を要したという。これにはあまり知られていない秘話があった。そんな話を聞きに同動物園を訪ねた。
1903年開園、上野動物園に次ぐ歴史
「京都市動物園」は1903年に開園し、国内では上野動物園に次ぐ歴史を持つ。ピーク時には140万人を数えた年間入園者数も、1998年(平成10年)頃から65万人前後を推移するようになり、2002年(平成14年)には60万人にまで落ち込んだという。 ところが、2009年(平成21年)に「京都市動物園構想」が策定され、これは「市民の手による、市民のための動物園づくり」という、市民参加型の構想計画だった。そして開園した状態で7年かけて改装を重ね、昨年11月、ついにグランドオープンした。現在は100万人を達成している。
わずか4メートルという至近距離で観察「ゾウの森」
人気がV字回復したのには、それなりの理由がある。たとえば、トラの息遣いや迫力を間近に感じられるようにと、トラ舎は「人止め柵」を撤去。頭上を歩く空中通路も設けている。「サルワールド」のゴリラも、本来の自然の姿を再現。木の実を食べに木に登るゴリラのために、エサも天井部分から与え、そういう行動を見ることができる。他にも、アイデアが満載で、市民目線の動物園に生まれ変わったと言える。 獣医師・学芸員の坂本英房さんは、こう話す。「大幅なリニューアルはこれまでなかった。建物が老朽化していたこともあり、約7年かけて整備しました。今は滞留時間が長くなっています」 さまざまな工夫や仕掛けが施されており、見どころ豊富なだけに、うれしい結果だろう。そんな中、「ゾウの森」では、アジアゾウがわずか4メートルという至近距離から水浴びなどを観察できる。今や人気者になっている子ゾウだが、以前からいる大人の一頭に加え、オス1、メス3はラオス政府から寄贈されたものだ。 「小さい社会ですが、群れで生活していますので、ゾウ社会の構造がわかるんですよ。オスがいじめられていると、リーダー格のお姉ちゃんゾウが止めに入ったり、慰めたり、そういう行動が垣間見えます」とのこと。