リニューアルでV字回復した「京都市動物園」子ゾウ寄贈秘話
学芸員が語る「ゾウ寄贈秘話」
さて、この子ゾウの寄贈には、秘話があり、それはあまり知られていない。ゾウの取引は、絶滅の恐れがあるため、ワシントン条約で規制されているためだ。しかし、今回はゾウを群れで飼育して繁殖につなげる研究を進めることや、2015年が日本とラオスの外交関係樹立60周年にあたり、無償で寄贈されたという。 「繁殖の計画をつくり、そのプロジェクトを立ち上げました。ラオスでもかつては多くのゾウが生息していましたが、最近は乱獲や自然環境の変化などで減少し、同国内のゾウは500頭ほどだと言われています。ゾウの受胎率はわずか5%で、100回やって5頭しか産まれない。そんな状態です。だから両国が一緒になって繁殖の研究をするということで、届け出を出し、はじめてワシントン条約のOKが出たという経緯がありました」(坂本さん) 京都ラオス人民民主共和国名誉領事館、名誉領事の大野嘉宏さんは、ラオスでの子ゾウ探しに奔走した1人で、こう振り返る。 「動物園から譲り受けたと誤解されがちですが、違うんですよ。ラオスの山岳地帯にある村を丹念に調べ、何度も訪れ、4頭確保するのに実は3年もかかっているんです。野生ゾウは飼育に向かないため、農作業や運送に使う“使役ゾウ”を探し、ようやく見つかったんです」 そのような苦労を経て、小ゾウたちは今、元気な姿を見せている。 (文責/フリーライター・北代靖典)