『放課後カルテ』松下洸平はなぜ無愛想なのに優しい? 医師としての“距離感”が生む親しみ
不干渉は、時に優しさになる。『放課後カルテ』(日本テレビ系)の牧野(松下洸平)を見ていると、時折そんなことを思う。牧野は、子供たちの健康や病に口を出したとしても、助けを求められなければ必要以上に立ち入らない。子供たちを教育する先生の立場ではなく、あくまで医者として関わる。牧野の、“学校医”ではあるが、“養護教諭”ではないという確固たる態度は、さまざまな事情を抱える子供たちに救いを与えてきた。第5話では、一線を引いて子供たちと関わるようになった所以が語られる展開となりそうだ。 【写真】「マジかよ……」『放課後カルテ』松下洸平の“絶望顔”(5枚) 牧野の子供たちへの態度は、作中のどの立場と比較しても特異的だ。篠谷(森川葵)のように、子供を導く先生としてたしなめたり、子供だから仕方ないと諦めたり、叱りつけるような立場はとらない。子供たちと一人の人間として対峙し、間違いがあれば本気で怒り、賞賛に値する行動があればきちんと褒め、認める。言葉を選ばずに言えば、子供だからと言って、舐めた態度を取らないのだ。子供を子供扱いせず、一人の意思のある人間として子供を見つめているからこそ、ぶっきらぼうな態度をとっていようと、牧野の元には子供たちが集まってくる。第4話の課外学習のシーンで、牧野が子供たちにいじられつつも囲まれて歩いている姿からは、子供たちから牧野への信頼の情が感じられた。牧野の子供たちへのいい意味での不干渉さは先生や親の子供たちへの接し方に比べて異質だからこそ、子供たちから一種の優しさとして受け止められてきたのだ。 他方で、牧野は子供たちの健康や命が脅かされたり、助けを求めない限りは何もしない。あくまで医者という立場を守り、必要以上に踏み込もうとしなかった。そんな彼が初めて自分から走り出したのが、第4話の最後だ。複雑な家庭環境から、破壊衝動が抑えられなくなってしまった羽菜(小西希帆)から罪の告白を受けたものの、羽菜の精神状態や家庭環境に踏み込むことは自分の仕事ではないと、牧野は一線を引く。そんな彼が、羽菜を崖の一歩手前から救うために走る。牧野が自分の殻を破った瞬間だった。