「高レベル放射性廃棄物」地層処分の安全性「ハザードとリスクは別物」専門家が解説
政策アナリストの石川和男が9月21日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。原子力発電に伴って発生する「高レベル放射性廃棄物」の最終処分の安全性について専門家と議論した。
原子力発電所で使い終わった燃料の約95%はリサイクルして再利用が可能だが、残り約5%は「高レベル放射性廃棄物」として最終処分される。液体状の廃棄物は、融かしたガラスと混ぜて固めた「ガラス固化体」にして、厚い金属と粘土でバリアをして地表から300メートル以上深い安定した地層(岩盤)に埋められる。現在、日本ではこの「地層処分」を安全に行うことができる場所を探している。 番組にゲスト出演した東海大学工学部応用化学科教授の若杉圭一郎氏によると、「高レベル放射性廃棄物」の処分方法は世界で原発が稼働し始める前の1960年代から議論が始まっていたという。宇宙にロケット等で打ち上げる宇宙処分や、海溝や海底に廃棄する海洋投棄、南極の氷の下に処分する氷床処分、地上での貯蔵管理等が検討されてきたが、いずれも国際条約で禁止される行為や信頼性、コスト面、安全性などの理由から現実的ではないと判断されてきたと語った。 また、地層処分は地表から300メートル以上深い岩盤に「閉じ込めと隔離によって、放射性物質を人間の生活圏から隔離し、放射性物質を止めておく」ことができると指摘。最近頻発している地震についても、これまでの観測データから「地下の揺れは、地上の揺れに比べて約3分の1から5分の1程度とされ、地下の方が揺れないということがわかっている」と述べた。そのうえで「ハザードとリスクの違い。例えば、目の前にものすごく毒性の強いものがあったとします。これは『ハザードが高い』と言います。仮にこの毒物が、ずっと遠くにあってかつ金庫に何重にも管理されているような状態であれば、私がその毒物から受ける影響はほとんど無視できるわけで『リスクが小さい』と言えます。このハザードとリスクは本来別物のはずなのに、地層処分になると皆さんリスクではなくハザードで判断してしまう」と語った。 石川は、最終処分地の選定に必要な調査が北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町で進んでいることを挙げ「これは北海道や佐賀だけの話ではなく日本全体の話。より多くの場所で調査が進むことが理想で、国民全体が真摯に考えるべき。国はその機運醸成により一層努めてもらいたい」と述べた。