携帯大手3社、料金プランでつば競り合い 「経済圏」拡大へ競争過熱
携帯電話大手3社の2025年3月期第2四半期(4~9月)連結決算が出そろった。ソフトバンクは好調な業績を受け通期業績予想を上方修正。KDDIも増収増益を確保した一方、NTTドコモは通信サービス収入が落ち込み、増収・営業減益だった。主力の携帯電話事業ではドコモが料金据え置きで月間データ通信量を引き上げると、残る2社もすぐに追随するなど低価格化による顧客獲得競争が激化。飽和状態にある携帯電話事業の顧客基盤を生かして、通信と金融を融合させた付加価値サービスへの投資が加速度を増しており、携帯利用者をポイントプログラムで囲い込む「経済圏」争いが熾烈(しれつ)を極めている。 【関連写真】携帯大手3社の4~9月期連結業績の一覧 ◆売上高は過去最高 ソフトバンクは全セグメントで増収・営業増益を達成し、売上高が3兆円を突破して過去最高となった。下期も業績は好調に推移するとみて、通期連結業績予想を上方修正した。 主力の携帯電話を含むコンシューマ事業は、スマートフォンの契約数が前年同期比4%増加し3110万件となった。格安スマホの「ワイモバイル」などから「ソフトバンク」へのブランド移行収支は、21年春の通信料値下げ以降、上期で初のプラスに転換した。 エンタープライズ事業はソリューションサービスが堅調で売り上げ・利益とも2桁成長。ディストリビューション事業は同44%増収、20%増益と大幅に伸長した。LINE・ヤフー事業を含むメディア・EC事業も同40%増益と大きく伸びた。ファイナンス事業はPayPayの黒字化で収支が大幅に改善した。 宮川潤一社長は「LINEの諸問題が落ち着き、赤字だったPayPayが黒字転換するなど頭を悩ましてきた問題が一つずつ解決し、昨年とは全く違った景色になった」と成果を強調した。 ◆成長領域が伸びる KDDIは、本業の通信事業のほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)や金融など成長領域が伸び、増収・営業増益となった。 携帯事業などパーソナルセグメントは、主力の「au」や「UQモバイル」「povo」のマルチブランド通信ARPU(1契約当たりの平均売上高)収入が前年同期比46億円の増益。楽天からのローミング(相互乗り入れ)など収入減は同112億円だった。 注力領域の金融は、auじぶん銀行の預金口座が同94万件増、auPAYゴールドカード会員は同41万件増と順調。エネルギー事業ではauでんきなどの契約数が3万件増加した。 DXを含むビジネスセグメントは、売上高が同13.1%増、営業利益は同11.1%増と2桁成長した。IoT関連サービスのほか、生成AI(人工知能)需要を捉えデータセンター事業が国内外で拡大した。高橋誠社長は「高利益率の事業がビジネスセグメントの成長をけん引している」と力を込めた。 ◆金融領域さらに拡大 NTTドコモは通信料値下げの影響が依然響き、増収・営業減益。携帯電話事業を含む柱のコンシューマは、d払いアプリといった金融決済などのスマートライフは売り上げ・利益とも2桁成長したが、モバイル通信サービスの収入減と顧客基盤強化に向けた販売促進費の増加などでコンシューマ通信が落ち込んだ。 10月末でdカードゴールド会員が1100万契約を突破するなど好調な金融領域のさらなる拡大に向け、前田義晃社長は「新たなラインアップとしてdカードプラチナを11月25日から提供する」と明らかにした。 法人事業は大企業向けの統合ソリューションが順調に伸びたが、PSTN(公衆交換電話網)のマイグレーションに伴う費用増などで減収・営業減益だった。 ドコモは10月からオンライン専用プラン「ahamo」の月間データ通信量を、料金はそのままに、従来の20ギガバイトから30ギガバイトに引き上げる実質値下げに踏み切った。 これを受け、ソフトバンクはワイモバイルとLINEMOの料金プランを刷新。宮川社長は「1社でも競争の動きがあれば対抗せざるを得ない。あらゆる物価が上がっている中で通信料だけが値下がりしている状況。このままで良いのか、業界全体で考えなければならない」と本音を明かす。 UQモバイルとpovoで対抗したKDDIの高橋社長は「30ギガバイトまで使った後は、auの無制限プランにプラン移行してもらいたい。30ギガバイトへの拡張は中容量帯の料金プランの転換点で、中容量帯の容量をこれ以上増やしていくことは考えていない」と述べた。 携帯電話事業の成長が鈍化する中、各社とも、低料金プランで呼び込んだ新たな加入者を自社のポイント経済圏に取り込む戦略を強化しており、経済圏拡大を巡る争いは激しさを増している。 ◆楽天の存在感高まる、みずほFGと資本業務提携 政府主導による通信料値下げの影響で足踏みが続いた携帯大手3社を横目に、攻勢をかけるのが後発の楽天グループだ。 13日に発表した2024年12月期第3四半期(1~9月)連結決算は、最終損益は1503億円の赤字だったものの赤字幅は前年同期の2084億円から縮小。7~9月でみると、営業損益が5億円の黒字となり、20年に携帯電話事業に本格参入して以降、初めて黒字化を達成した。 三木谷浩史会長兼社長は「モバイルも将来的なビジョンが立つようになってきた。グループ全体の成長のブースターになっている」と自信をにじませた。 13日には、みずほフィナンシャルグループ(FG)が楽天グループ傘下の楽天カードに出資し、資本業務提携を結ぶことで合意した。提携クレジットカードを12月3日から提供するほか、ポイントサービスでの連携も検討を進めるという。 ◆互いの顧客基盤強化 両社は既に証券ビジネスで協業しており、提携する分野を決済やポイントへと拡大して互いの顧客基盤を強化するのが狙い。 楽天の存在感が高まることで、携帯大手各社の動きがさらに活発化しそうだ。
電波新聞社 報道本部