警察官が見当たり捜査で注目する「顔のパーツ」年をとっても変わらないのは?
● 警察博物館で「似顔絵捜査員」に挑戦 実際には、犯罪者や行方不明者の目撃情報や記憶から人の顔を確定する必要性もあります。たとえばモンタージュ写真。最も有名なものは、3億円事件の犯人を表した顔写真でしょう。 やはり既存の顔写真の一部分の組み合わせで特定の人物を表現するのは難しく、この写真は信頼性に対する疑問から時効前の1974年12月に正式に破棄されています。 現在は、目撃者からの聞き取りでは、似顔絵を描いて犯人の逮捕の資料とする似顔絵捜査官(員)もいて、横山秀夫の小説『顔 FACE』(徳間文庫)の題材にもなっています。 24年11月に足を運んだ、東京の中央区にある警察博物館(ポリスミュージアム)では「似顔絵捜査員に挑戦」というコーナーがあります。輪郭や目、鼻、口、髪形などの目撃情報を元に、それに近いと感じるパーツを選んで似顔絵を完成させるゲームです。最後に犯人の顔と比べるのですが、実際にやってみるとなかなかうまくいきません。 たとえば輪郭について「面長だった」と聞いても、目撃者と作成者がイメージする面長の加減はどうしても異なるのでズレが生じるのでしょう。 警察博物館には「写真をもとに指名手配犯を捜査」というコーナーもあります。はじめに数秒間見た指名手配犯の顔を見て、次に提示された場面の中から犯人を探し出すというゲームです。犯人は変装しているので、漠然とした記憶では正解には至りません。 目撃者と捜査官とのコミュニケーションが相当充実していないと顔の再現は難しいのでしょう。実際の捜査では、出来上がった似顔絵を目撃者に見せて、さらに細かな修正を加えていくのだそうです。 先ほどの見当たり捜査に登場した中村氏は「AIは容疑者を見つけることができても、捕まえることはできません。AIが逮捕できるようになるまでは『見当たり捜査』はなくならないと思います」と発言しています。 人間の目視や記憶とデジタルの顔認証の技術をうまく組み合わせることが大切なのでしょう。 最近では、写真だけでなく重要指名手配犯の動画を流している例もあります。またAIを使って昔の写真から現在の顔を予測したり、体形の予想される変化などを取り込むことも検討されています。似顔絵捜査官と目撃者のコミュニケーションを円滑に進める技術が発展する可能性もあるのではないでしょうか。 交番の広報掲示板などを見ると、犯罪者だけでなく、行方不明者の探索においても両者の連携が求められているように思います。 (構成/フリーライター 友清 哲)
楠木 新